METALLICA
METALLICA(US/米)
#54 / MASTER OF PUPPETS / 1986
★★★★★★★

スラッシュメタルの大傑作と呼ばれる3rdアルバム「メタル・マスター」です。コレを聴かずしてMETALLICAを語ることなかれ、スラッシュメタルを語ることなかれ!しかしながら、残念なことにクリフ・バートンが参加した最後のアルバムでもあります。アルバムリリースから約半年後、ツアーバスの事故でクリフは亡くなってしまいました。デビューからのファンにとっては、おそらく今作がメタリカのナンバーワンアルバムとなっているはず。SLAYERの「REIGN IN BLOOD」がトータル28分という短い収録時間だったのに対し約2倍のボリューム、つまり曲の構成が複雑で緩急があるということ。この点のみをざっくりとスラッシュ四天王/Big4で比較するなら…SLAYER<ANTHRAX<METALLICA<MEGADETH…という感じになるでしょうか。オープニングを飾る“Battery”とタイトル曲の連発は堪りませんね。完璧です。当時ジェームズ・ヘットフィールドの歌メロが和風に聴こえてね、アメリカ人がこういうメロディを歌ってるのが新鮮だった。ジェームズの風貌はステレオタイプの「アメリカ人」という感じがするからね。大股開きの前傾姿勢で歌う姿が実にかっこいい。エクスプローラーがまた似合ってるんだな。”Welcome Home(Sanitarium)”は、映画「カッコーの巣の上で/One Flew Over the Cuckoo’s Nest」(ミロス・フォアマン監督、ジャック・ニコルソン主演による1975年作品。Cockoo’s Nestとは精神病院の蔑称の一つ。第48回アカデミー賞にて作品賞をはじめ主要5部門を独占したアメリカンニューシネマの傑作)にインスパイアされた曲で、それを発展させたのが次作収録曲の”One”なのです。ちなみに”One”のMVに挿入されたのは映画「ジョニーは戦場へ行った/Johnny Got His Gun」のいくつかのシーンでした。映画の原題は、第一次世界大戦時、志願兵募集に使用された宣伝文句「Johnny Get Your Gun」を皮肉ったもの。ダルトン・トランボ原作/脚本、監督によるこの衝撃的な反戦映画もお勧めでございます。終盤はクリフのベースプレイをメインに据えたインスト”Orion”、そしてライブには欠かせない”Damage, Inc.”で締めくくられる。METALLICAは「ブラックアルバム」以降、この時代のファンからしてみると微妙な路線にシフトしてしまいました。それでモンスターバンドに成ったのだから大成功なんだけれど…原点回帰とか何とか耳にするたびに期待しても、現在に至るまで裏切られ続けている。結局のところ、クリフ・バートンが肝だったということか。
#231 / RIDE THE LIGHTNING / 1984
★★★★★★

2番目に好きなメタリカのアルバムです。1stで提示したのはNWOBHM期のスピード曲と、MOTORHEAD(パンク)由来のアグレッションが融合した新しい音楽(スラッシュメタルの原石)でした。今作ではクリフ・バートンとカーク・ハメットが曲作りに関わったことで、楽曲の幅が一気に広がった。傑作アルバム「メタルマスター」の前夜祭的作品という位置付けでもありおススメです。オープニングの”Fight Fire with Fire”や”Creeping Death”では、“Battery”や”Master of Puppets”に繋がる曲展開を聴くことができるし、エンディングの9分に及ぶ長編インスト”The Call of Ktulu”も、“Orion”に繋がるスタイルなので、今作を聴いてから「メタルマスター」を聴くのがいいかも。タイトルチューンはジャケに描かれている電気椅子がモチーフになっている。前出インストとともに、デイヴ・ムステイン在籍時の曲で、デイヴも1枚噛んでいる曲らしい。”For Whom the Bell Tolls”はヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」ですね。原作は読んでいなくとも、ゲイリー・クーパーとイングリッド・バーグマン主演の映画を観たことがある人は結構いるのではないかと。”Fade to Black”は長きに亘りライブの定番曲になります。”Trapped Under Ice”は前作の流れを汲むスピードチューン。あとは”Escape”か。6分を超える曲が半分を占める全8曲を収録。インストを放り込んでくるあたりは、やっぱIRON MAIDENの影響かな。ジェームズかラーズが、あるいは二人とも好きなんでしょ。それをクリフが発展させたに違いない。クリフが関わった3枚は必聴です。個人的にはクリフのMETALLICAが好きでしたが、同じ路線のアルバムは2度と作れなくなってしまった。クリフが生きていたらどんな4thになっていたのかな。4枚目の法則(4thに名盤が多いという私的見解)から考えても、3rdを超える大傑作スラッシュアルバムを作ってたかも、などと考えてしまう。とりあえず1曲目のインパクトが凄かった。この切れ味とスピードは、SAVAGEの”Let It Loose”や、自身が1stで提示したスタイルの進化版。ラーズのタイトなリズムが重要だと思われます。さすがにジェームズの声が若いな。
#313 / KILL 'EM ALL / 1983
★★★★★

「血染めの鉄槌(ハンマー)」という邦題が付けられた記念すべきデビューアルバムです。世間的には、VENOM(個人的にはSAVAGE)がこれより少し早い時期にそれらしきことをやっていたということになっているらしいですが、スラッシュメタルのオリジネーターは、このジャンルを世間に知らしめた功績も含めMETALLICAで間違いないでしょう。 一聴して新しいと思ったし、もちろんSAVAGEの音も頭をよぎりましたよ。あの路線を突き詰めたんだなと。VAN HALENの1stやIRON MAIDENの1stに匹敵するインパクトだったかもしれない。アグレッシブな音楽に飢えてたのかな。当時はまだスピード感のある音楽が少なくて、メイデンの”Charlotte the Harlot/娼婦シャーロット”で「速い!!」と思ってたくらいだからね。まさに需要と供給が合致した瞬間でした。もちろんヘビーローテーションだったさ。今作にはデイヴ・ムステインが関与した曲が4曲含まれているのも特徴です。ムステインの解雇で急遽EXODUSから加入したカーク・ハメットは曲作りに関与していません。クリフ・バートンはベースのインストのみを作曲。よって本当の意味でのデビューアルバムは2nd「RIDE THE LIGHTNING」と言えるかもしれませんが、そこで期待を上回る進化を遂げるのでした。
#536 / ...AND JUSTICE FOR ALL / 1988
★★★★★

クリフ・バートンが事故で亡くなり、FLOTSAM AND JETSAMのジェイソン・ニューステッドが加入した4thアルバム「メタルジャスティス」です。前作同様邦題は「メタル〇〇」だね。過去2枚においてメロディメーカーだったクリフ不在により楽曲の雰囲気が変わり、特に長尺曲であるタイトルチューンや”To Live is to Die”あたりで、次のブラック・アルバムで提示される要素が多々見られます。空耳アワーの名作「バケツリレー、水よこせ~」でお馴染みの”Blackened”も懐かしいのですが、一番思い出深いのは“One”のPVで間違いない。映画「Johnny Got His Gun/ジョニーは戦場へ行った」(反戦映画の金字塔:ダルトン・トランボ監督、ティモシー・ボトムズ主演の1971年作品)のシーンを挿入した例のアレですね。ジェームズ・ヘットフィールドが白いエクスプローラーを掻き鳴らす(ギターのストロークをダウンじゃなくアップでフィニッシュする)映像は文句なしにかっこいい。神経質そうな表情もテーマに合っていて良かった。日本盤のボートラとして、ラーズとジェームズのアイドルであるDIAMOND HEAD”The Prince”を収録。原曲がいいから文句なし。ただね、このアルバムには決定的な弱点があります。音のバランスに違和感があるのね。それはジェイソンのベースが聴こえない(さすがに”The Prince”のベースだけのパートは聴こえるけど)から。ジェームズとラーズによって意図的に消されたらしい。リズムギターやバスドラがベースラインを担当しているんだね。この低音の質の違いが違和感の根源と思われます。スラッシュメタルとしては最後の作品なので、寅次郎でも誰でもいいからリ・レコーディングを熱望する1枚です。ジェイソンの音を大きくして、ラーズが叩き直してリミックスしてもいいよね。現代のテクノロジーを駆使して誰かどうにかしてほしい。
#950 / METALLICA / 1991
★★★★★

メタルモンスター誕生の5th通称「ブラックアルバム」です。メタルの世界においても革新的な1枚となりました。3000万枚売れているそうな。オープニングはNYヤンキースのクローザー、マリアーノ・リベラのテーマ曲としても有名な“Enter Sandman”です。あのイントロが流れるとヤンキースタジアムに大歓声が響き渡る。絶対守護神だから。あのカットボールは誰にも打てないわけ。彼が登板すればその試合は勝ち!ファンは安心して盛り上がることができるのさ。まあ野球の話はさておき、まず思うのはひたすらへヴィだってこと。このド迫力の肝はタイトなドラム(このアルバムのラーズの音は好き)を覆い尽くすベースの音かな。ジェイソンが弾いてるんだよね!?何よりボブ・ロックとマイケル・ワグナーの仕事だな。90年代に入って録音技術が進化したってのもあるでしょう。その他ミッドテンポで長め(収録時間も長い)且つグル―ヴィーな曲構成というのが特徴です。ギターソロはまだある。ジェームズ節に関しては全カタログ中最高のパフォーマンスでは!?ライブの定番曲多数なので聴いておきましょう。残念ながらスラッシュメタルの要素は皆無です。世界一のメタルバンドになった代償か、この後はご存じの通り迷走を続けています。「千代田生命に行こう!」や「寿司、鳥、風呂、寝ろ!」などの名作空耳もこのアルバムだよ(笑) 前作には「バケツリレー、水よこせ!」があったね。
#1678 / GARAGE INC. / 1998
★★★★

2枚組のお遊び(かなり本気)カバーアルバムです。自身が影響を受けたバンドをカバー。カバーアルバムは数あれどコレに関しては原曲を知らない方が楽しめるかも。4曲カバーしてるDIAMOND HEADは昔からラーズがリスペクトを公言。NWOBHM大好きなわけだ。おそらくクリフ・バートンも。当然ジェームズの声は合わないかな。BEATALLICAが頭を過ってしまう(笑) BOB SEGERの“Turn the Page”あたりがジェームズの真骨頂だ。SABBATHは途中に“Nationl Acrobat”が挟まっている準メドレー。MERCYFUL FATEも意表を突かれたけどこれまたメドレー形式。声が違い過ぎて原曲を見失うこと必至。BOCの“Aatronomy”は微妙。LYNYRD SKYNYRDはジェームズのチョイスでBLITZKRIEGはラーズでしょうな。クリフ・バートン時代の音源だから貴重だよ。QUEENは激し目の曲とはいえ意外中の意外、誰の趣味でしょう。4曲収録のMOTORHEADは違和感なくジェームズの声がハマってる。BUDGIEは興味あるけど未聴…と思いきや“Breadfan”は人間椅子の“針の山”でした。このリフは印象的。THIN LIZZYは有名すぎてズルいが、やっぱ皆フィル・ライノットが好きなんだな。ハードコアパンク系は基本知らないので特に感想もなし。とりあえず「GARAGE DAYS RE-REVISITED」を丸々、プラス貴重なB面曲が網羅されているのでファンはマストだね。「LOAD」「RELOAD」とオリジナルアルバムが微妙な時期だったのでコレに救われました。