GARY MOORE
GARY MOORE(Ireland/愛蘭)
#205 / BACK ON THE STREETS / 1978
★★★★★

一応1stソロだよね。これ以前もソロみたいなものだから1stと言うべきか微妙ではある。まあ、それはそれとして、今作をきっかけにハードロック・フィールドにおいて名作を連発することになるのですよ。特にロックギタリストしているゲイリーを堪能できるコレが好きです。ハードロックもフュージョンもブルースも文句なし。参加メンバーはTHIN LIZZY組のフィル・ライノットとブライアン・ダウニー、COLOSSEUMⅡ組のドン・エイリーとジョン・モール、加えてサイモン・フィリップスなので間違いなし。プロデュースはクリス・タンガリーディス。冒頭3曲はハードロックンロールのタイトルチューンと、THIN LIZZYの“甘い言葉に気をつけろ/Don’t Believe a Word”のスローブルースバージョンと、ライノットのハードロック”狂信的なファシスト/Fanatical Fascists”の歌モノですね。4曲目の“Flight to the Snow Moose”から7曲目まではCOLOSSEUMⅡ路線でいよいよ本領発揮。インストが3曲。“Hurricane”は当時のお気に入りのインストだったな。オープニングのタイトル曲およびCOLOSSEUMⅡ状態の4曲には当時の彼女の名前がクレジットされています。フュージョン畑の人なんでしょうか?スローなヴォーカル曲“ドナの歌/Song for Donna”は彼女について歌ったモノだと思われますが、あの名曲“Rivers”を髣髴とさせる素晴らしさ。ゲイリーの独特なヴォーカルも味があって良い。で、アルバムのトリを飾る“パリの散歩道/Parisienne Walkways”ですよ。言わずと知れた名曲中の名曲です。2013年のデラックスエディションを購入しました。ボートラは3種類の“スパニッシュ・ギター”なのね。コレが聴きたかった。無理矢理なスパニッシュリズムがちょいと安っぽい気もしますが、ゲイリーの魅力が炸裂したいい曲だね。あと“Track Nine”というCOLOSSEUMⅡ路線の素敵なインストも収録。シングルのB面だったらしいのですが、アルバムのアウトテイクってことかな。曲名は「幻の9曲目」といったところか。
#474 / CORRIDORS OF POWER / 1982
★★★★

全英30位まで届いた、傑作と認識されている3rd(Gary Moore Bandをカウントした場合)ソロアルバムです。G-Forceも含めれば4thってことになります。全体的にクオリティの高い作品ですが、オープニングの”Don’t Take Me for a Loser”に代表されるように、ともすればポップに感じる楽曲は、当時の耳には刺激が足りなかった。曲調はともかく、せめてもっと弾きまくってほしかった。バラードにも定評があるから欠くことはできないでしょうが、3曲は要らないかも。”Falling in Love with You”だけでよかったね。個人的には、2分のギターソロで始まる“End of the World”がお気に入りでした。G-Forceでも似たようなフレーズがありましたが、フレーズのみならず音の汚さまで似ている(笑) ワイルドさを強調するためにエフェクトを省いているだけかも知れませんが、ゲイリーが考える「ハードさ」はこの音だったのでしょう。この曲にはジャック・ブルースがボーカルで参加しています。あとは、FREEの”Wishing Well“のカバーも秀逸でした。先に聴いたのはオリジナルで間違いないのだが、こちらのバージョンの方が馴染み深い。この2曲はエアチェックして聴いていたと思われます。「BACK ON THE STREETS」はフィル・ライノット、ジョン・モール、ドン・エイリー、ブライアン・ダウニー、サイモン・フィリップスというCOLOSSEUMⅡとTHIN LIZZY人脈の豪華共演人でしたが、今回はイアン・ペイス、ニール・マーレイ、チョイ役でジャック・ブルースとドン・エイリー再びというDEEP PURPLEとCOLOSSEUMⅡとRAINBOW(というかCOZY POWELL)人脈となっており、売れる方向性に舵を切ったことが功を奏して、一般的に評価が高いようです。ゲイリーの代表作であることに疑いはないので必聴盤でしょうね。
#557 / DIRTY FINGERS / 1983
★★★★★

2011年2月6日、スペインのアンダルシアにてゲイリー・ムーアが亡くなりました。ロニー・ジェームズ・ディオに続いて人間国宝がまた1人逝ってしまった。享年58歳。まだまだやれたし、20年に亘るブルース期を経て、いよいよハードロックフィールドに戻ろうかって矢先だっただけに残念でした。というわけで、ハードロック時代の5thアルバムですが、レコーディングされたのは前作「コリドーズ・オブ・パワー」よりも前の81年でした。つまり諸事情により一度お蔵入りになったというわけ。当時は12インチシングル「ニュークリア・アタック」しか発表されませんでしたが、83年に日本で先行リリース、やっと陽の目を見た作品です。メンバーは、お馴染みドン・エイリー(Key)の他、リズム陣にはジミー・ベイン(B)、トミー・アルドリッジ(Ds)、そして、ゲストボーカルが参加した唯一のアルバムでもあります。元TED NUGENTバンドの人ですが、後にVICTORYやFOGHATでも活躍しているようです。専任シンガーゆえゲイリーより上手いけれど、個性はないね。出番は少ないながらゲイリーも歌ってます。オープニングの”Hiroshima”で掴みはオーケー。日本で人気があったゲイリーが、日本を意識して日本で先行リリース、思惑通りでしょう。ギターインストのタイトルチューン(素敵なアートワークを鑑賞しながら聴きたい)、アニマルズやサンタ・エスメラルダで有名なスタンダードナンバー”Don’t Let Me Be Misunderstood/悲しき願い”などが続き、グレッグ・レイクのソロアルバムにも提供された前出”Nuclear Attack”が炸裂、ここがアルバムのハイライトですね。ラストを飾る曲のタイトルが“Rest in Peace”なのね。ちょっと泣けるでしょ?きっと今頃は天国でフィルと合流して“Out in the Fields”だね。
#647 / RUN FOR COVER / 1985
★★★★★

ハードロック感が薄れてきた作品ですが、それはUFOのニール・カーター(Key)と組むことによってメロディを重視するようになったから。売れる楽曲でギターヒーローとしての地位を確立した7thアルバムです。今作の目玉は強力な2曲の存在に他ならない。まず“Out in the Fields”は、盟友フィル・ライノットとの共演であり、アルバム発表の4か月前にシングルとしてリリースされ、全英5位を記録したゲイリーの代表曲です。フィルとゲイリーのダブルボーカルでベースはフィル。そしてもう1曲、84年に「VICTIM OF THE FUTURE」からシングルカットされ全英51位を記録した名バラード“Empty Rooms”も再録音され収録されました。このスペシャルな2曲が今作のハイライトで間違いない。あとは、フィルがグランド・スラム時代に作った“Military Man”もいいですな。リードボーカルとベースはフィルが担当、”ライノット節”の動と静を兼ね備えた素晴らしい曲です。終盤にはゲイリーのギターも躍動します。鍵盤には御大ドン・エイリーが参戦。今作に於けるもうひとつの目玉と言えるのはグレン・ヒューズ(DEEP PURPLE)の参加です。4曲でベース&ボーカルを担当していますが、イチオシは“Reach for the Sky”にしておこうか。絶好調という感じではないけれど、シンガーとしての存在感は流石の貫禄です。リーダー・トラックのタイトルチューン(これも良い)ではベースのみ担当しました。特に前半(LPにおけるA面)の出来が素晴らしいアルバムです。その他主だった参加ミュージシャンとしては、OZZY OSBOURNEのボブ・デイズリー(B)が1曲、ROXY MUSICのドラマーが4曲、ドン・エイリーが2曲参加しています。毎度毎度の豪華客演陣、クレジットを見ているだけでワクワクするゲイリーのソロアルバムでした。
#649 / AFTER THE WAR / 1989
★★★★★

ハードロックフィールドでの最後の作品となった全部ひっくるめて通算9作目のアルバムです。この後はブルーズ路線に移行してしまうわけですが、出来がいいだけに残念この上ないね。今回の参加メンバーは、お馴染みのニール・カーター(keyの他ソングライティングにも関わる)、ボブ・デイズリー、ドン・エイリーに加え、ドラムの大半をコージー・パウエルが叩いている。サイモン・フィリップスは2曲担当。そして何と言ってもオジー・オズボーンの参戦が目玉ですね。タイトルトラックはメロディ重視のハードロックで文句なしのゲイリー節。続く”Speak for Yourself”、”Livin’ on Dreams”も共に素晴らしい。ここでオジーが歌う”Led Clones”が登場。曲名の通り、当時ZEPのクローンと揶揄されていたKINGDOM COMEのパロディで、曲調はZEPそのものですが、そこにオジーの声(存在感抜群)とストリングスアレンジが加わることで、クローンにはないオリジナリティが生まれています。CD版で追加収録されたロイ・ブキャナンのカバー”The Messiah Will Come Again”(インスト)は、ゲイリーのオリジナルかと思えるほどの嵌りようで、必殺技の一つである泣きのギターを堪能できます。LPに於けるB面1曲目は、”After the War”系のHR曲”Running from the Storm”に戻り、ここから2周目の様相を呈す。続く”This Thing Called Love”はVAN HALENみたいで面白い。エディみたいなギターリフ、コーラスワークも意識しているに違いない。マーク・ボランみたいなリフでグラムロックする”Ready for Love”もいいですな。女声コーラスがグラマラスな雰囲気を加味している。そして目玉の大作“Blood of Emeralds”ですね。故フィル・ライノットに捧げるアルバムのハイライトで間違いない。リマスター盤のボートラとして追加収録(元々はシングルカットされたタイトルチューンのB面曲)されているTHIN LIZZYの名曲“Emerald”と併せて聴くのが正解。アイリッシュのメロディに満ち溢れた、フィルに対する思いが集約された名曲。ハードロックとの決別宣言と捉えることもできるし、フィルの死を経験したことで生きてるうちにやりたいことをやろうと決意したのかもしれない。それが出自のブルースだったと?LPはこの曲で大団円となっておりましたが、CD化に伴い先のカバー曲とともに、イントロアウトロに“Dunluce”(北アイルランドにダンルース城というのがあるらしい)というインストが付け加えられました。これが後付けとは思えないほど素敵らしくてね、余計な事してくれちゃって、となまらなくて良かったよ。人間国宝がハードロック時代を締めくくる傑作ゆえ必聴と言わせて頂きたい。
#1033 / VICTIMS OF THE FUTURE / 1983
★★★★

ソチオリンピックで“パリの散歩道”が再注目されたのも記憶に新しいですが、この6thアルバム「炎の舞」にも“Empty Room”というバラードの名曲が収録されています。よほどのお気に入りなのか今作の出来に不満があったのか「RUN FOR COVER」でリメイクしています。オープニングを飾るタイトル曲は文句なし!“Shapes of Things”はYARDBIRDSをカバーしたJEFF BECKヴァージョンのカバー(笑) “Murder in the Skies”は前年に起こった大韓航空機撃墜事件についての曲です。さすがB面1曲目に配置されただけのクオリティで、イントロのゲイリーのギターも怒ってますよ。さて、今回のアルバムに参加した豪華メンバー。まずはUFOのニール・カーター。カバーを除く前出3曲にクレジットされているのは流石です。ベーシストはRAINBOWのボブ・デイズリー。WHITESNAKEのニール・マーレイも。そしてドラマーはDEEP PURPLEのイアン・ペイス。SLADEのノディ・ホルダーまでもがバッキングヴォーカルで参加しております。グループ名だけ見てると超豪華。
#1163 / WILD FRONTIER / 1987
★★★★

1986年フィル・ライノットが死去。フィルに捧げるためでしょうね、アイリッシュ・サウンドを前面に押し出した作品となりました。アイリッシュなハードロック“Over The Hills And Far Away”とタイトルチューンにアルバムの路線が如実に表れていますが、一番の聴き所はやっぱバラードのインスト曲“The Loner”でしょうね。COZY POWELLの「OVER THE TOP」に収録されていた曲のカバー(もともとはJEFF BECK GROUPのマックス・ミドルトンがベックのために書いたもの)で、泣きのギターが非常に美しい名曲です。Live in Stockholmの映像を是非ご覧あれ。色んなパートがくっ付いてますがゲイリー節炸裂の泣きまくりプレイが堪能できますぜ。この8thアルバムはゲイリー・ムーアの作品の中では非常に完成度が高く、最高傑作と認知されているようです。世界中で売れたんだよね。さて、今回の参加メンバーは必要最小限でニール・カーターとボブ・デイズリーだけ。ドラマーは…何を血迷ったかリズムマシン!アイリッシュな世界観を邪魔しちゃうとか、単に探すのがめんどくさかったとか、何かしら理由があってのことでしょうが…やっぱり人が叩かないと嫌だ。
#1587 / SPANISH GUITAR / 1979
★★★★

ハードロック時代の作品はすべて紹介してしまったので、今回はこちらの企画盤にしてみました。レコードリリース当時は知らなくてCD化された後に知った作品で、とりあえず目玉の“スパニッシュ・ギター”は聴きたくなるよねって感じ。それがフィル・リノット関連となれば尚更だ。ほぼ既発曲でも個人的にはオイシイところばかの詰め合わせ的作品になっております。タイトル曲が3バージョン。フィルのヴォーカルもゲイリーのヴォーカルも聴けます。あとは大好きな「バック・オン・ザ・ストリート」からと、これまた大好きなコラシアムⅡの2ndと3rdから選曲。がっつりハードロック時代のファンには微妙な作品ではありますが、フュージョン系のゲイリーを知るには便利なアイテムかと。ジャケも…よく見るとダメなんだけど(笑)パッと見はカッコいいと思う。ところがですね、「バック・オン・ザ・ストリート」を買い直したら、ボートラで“スパニッシュ・ギター”が収録されてるじゃん。こうなると、コラシアムⅡも持ってるし、このアルバムはもう用済みということになってしまうわけさ。
#2011 / STILL GOT THE BLUES / 1990
★★★★★

ゲイリー・ムーアが亡くなってもう10年が経ったのね。まだ細々とバンド活動を継続していた時期、候補曲として師匠が持ってきたのがブルース回帰第1弾のコレでした。ソロ作品としては10枚目くらい?G-FORCEとか挟まってるからややこしい。とりあえず「AFTER THE WAR」の次です。ゲイリーのキャリアからすると丁度真ん中あたり。ブルースに始まり、ジャズ・フュージョン期、ハードロック(ギターヒーロー)期を経てのブルース回帰。もう30年前なんだねぇ。師匠が候補に挙げた3曲がベストチョイスで間違いなし。”Walking by Myself”と”Still Got the Blues”と”All Your Love”だ。特に”Still…”はゲイリーの集大成と言ってもいいほどの出来。うっすらと楽曲を彩るストリングスもいいし、ゲイリーの歌唱も最高。声質は違うがグレン・ヒューズを想起させる円熟味。この曲に関してはゲイリーが歌わずして誰が歌うのかってレベルの嵌り具合です。そして全編に亘りハードロック・サイドでブルースギターを弾きまくっている点。このHRサイドってのがミソなのね。確かにブルース・ベースであり、中にはかなりブルースしている曲もあるけれど、ギターはハードロックの名残…というかハードロックギターにしか聴こえない。1曲目からして意図的に今作の方向性が宣言されているみたい。トレードマークである力強いピッキングがいい意味でブルース臭を薄めている。インスト曲もあるよ。その後の作品は未聴ですが、亡くなる前はガチ・ブルースを演っていたらしいから、このアルバムはHRファンに自信をもってお勧めできる最後の作品か。ちなみに、オリジナルPAF搭載の59年製レスポール(ピーター・グリーンのレスポールのスペアだったギター)が今作からメインに昇格したらしいです。ゲストも多いね。アルバート・キング、ドン・エイリー、ボブ・デイズリー、ブライアン・ダウニー、アルバート・コリンズ、ジョージ・ハリスン他。ジャケもね…裏ジャケとの対比が素敵。