SCORPIONS
SCORPIONS(Germany/独)
#8 / FLY TO THE RAINBOW / 1974
★★★★★★★★★
マイケル・シェンカーがUFOに引き抜かれたことにより、後にギター仙人と呼ばれることとなるギターヒーローが加入しました。当時の表記はウルリッヒ・ロート。この天才ギタリスト在籍時代のSCORPIONSが心底大好きなんですね。初めて聴いたのはヤングジョッキーで、アルバムをフルで聴いたのは高校に入ってからのことでした。同級生のA君に録ってもらいました。A君の親がRCAの関連会社に勤めているとかで、SONYのレコードを社格で買えるみたいな話を聞いた覚えがある。ちなみにA君はJOURNEYファンでした。というわけで2ndアルバム「電撃の蠍団」ですが、今作のプロデュースはまだディーター・ダークスじゃないのね。よってウリ作品ではあるけれど、後の作品と比べると少々異色ではあるかな。楽曲そのものだけでなくリズム隊(ドラマーはユルゲン・ローゼンタール)の音などプログレ風味(1stアルバムの雰囲気)が残っている。フランシス・ブッフホルツのベースもこのアルバムではキレッキレで、今作のリズム陣の音質は結構好きです。マイケル・シェンカーが3曲に関わっているのも特記事項でしょう。タイトル曲のイントロのアコギはマイケルが弾いている。10分に迫る大作にして代表作。劇的なツインリード、終盤の鬼気迫るギターソロ!マイケル→ウリのリレーは貴重です。とりあえず“Fly People Fly”を聴いてみてくださいな。これを泣きのギターと言わずして何と言う!? 泣きまくってるぜ~。ちなみにクラウス・マイネ(当時はマインと表記)は1番好きなHRシンガーです。小っちゃいドイツ人なんだけどね、パワフル且つ掠れ具合も絶妙で艶まであるという超一級品。三拍子も四拍子も揃っちゃってるもの。2010リマスターBlu-spec CD買いました。これで通算3枚目。オープニングの“Speedy’s Coming”からトリの“Fly to the Rainbow”まで全部いい!“This Is My Song”は高校でも大学でもコピーしたね。ベースがフレットレスっぽくてかっこいいんだよ。数少ない歌える音域の曲だし(笑) メンバーは、不動のクラウス&ルドルフ、そしてウリ。ベースはウリの推薦でフランシス・ブッフホルツ(ウリに極太アームバーを作ってあげたのは彼らしい)に。さらにドラムもウリの推薦でユルゲン・ローゼンタールに。どうやら元のバンド仲間らしいです。つまりこのアルバムのプログレフレイバーはウリ組によるものだったんだね。ゲストプレーヤーとしてAchim Kirschnig(key)が参加。
#39 / IN TRANCE / 1975
★★★★★★★★★
とにかくこの頃のスコーピオンズが好きで好きでたまらない。高1で初めてフルアルバムを聴いて以来、今日に至るまで何度聴いても飽きないんだね。クラウス・マイネもウリ・ロートも若さ漲る全盛期だもの。翳りのあるヨーロピアンHRという感触が独特で堪らんです。コレがウリ節ということなんでしょうね。当時、同じようなバンドがいそうでいなかった。このオリジナリティ、ウリ参加のアルバムにハズレ無し!高1の時クラスメートのA君に録ってもらったんだよ。もちろんカセットテープ(TDK)でした。それまではヤングジョッキーでオンエアされた曲くらいしか知らなかったと思う。デビューアルバムの曲(ウリ加入前、マイケル・シェンカー時代)だったかもしれない。師匠から候補曲として数曲聴かされたこともあったかな。高2でコピーしたのは”Another Piece of Meat”だったから、ウリ参加アルバムじゃないんだけどね。今回はウリ参加2作目の3rdアルバム「IN TRANCE」です。オープニングの“Dark Lady”でガッチリ心を鷲掴み。冒頭のおどろおどろしいギターの音色を聴くだけで色んなことを思い出すくらい刷り込まれている。マイネの強力なサポートがあるとはいえ、1曲目からウリのリード・ヴォーカルってのも凄い。続くタイトル曲はこの時期を代表する秀逸バラード。劇的なツインリードが炸裂する“人生は川の如し”は、マイケル・シェンカーがドタキャンした中野サンプラザを思い出させてくれる(笑) そして“Top of the Bill”のあの叫び!エフェクトと相俟ってド迫力、咆哮と呼ぶにふさわしいマイネのパフォーマンス。なんとも強靭な声帯の持ち主でしたね。続く“生と死”も、文句なく素晴らしい。レコード盤を裏返すと、ノリノリの“Robot Man”が第2幕の開演を告げる。続く“日暮れ時の風”も美しい。“Sun in My Hand”はいかにもジミヘンチルドレンのウリらしい定番のノリが病みつきになる曲。コンパクトにまとまった“炎を求めて”はコピーしたね。そしてアルバムの締めくくりは、ウリの多彩さが伺えるインスト“Night Lights”。常夜灯?想像力を掻き立てられます。メンバーはクラウス・マイン(マイネ)、ウルリッヒ(ウリ)・ロート、ルドルフ・シェンカー、フランシス・ブッフホルツ。前作同様ゲストkeyにAchim Kirschening。ドラマーはルディ・レナーズにスイッチ。そして記念すべき発禁ジャケ第1号アルバムとなりました(笑) でもコレはいいジャケだよ!こっちまで「うっとり」しちゃうね。伝説のストラト(極太アーム)も写ってるし。邦題は「復讐の蠍団」。2010リマスターBlu-spec CDをゲットしました。今後も買い換えていくのかな。
#42 / VIRGIN KILLER / 1976
★★★★★★★★★
高校時代に強烈な影響を受けた3バンドをもう1ターン(笑) 好みは人それぞれではありますが、同年代のファンに限って、スコーピオンズはウリ時代がピーク(下の世代であればMTV時代だったりする)と認識されているでしょう。この頃のウリのギターはなぜこれほどまでに感動的なのかね。ストラトキャスター(シングルコイル)なのに音が図太い。エフェクターどうこうの話ではない気がする。ジミヘンのヴァージョンアップといっても過言ではありますまい。このアルバムでのクラウス・マイネがこれまた凄まじい。そりゃポリープもできるよってくらいに。聴いてるだけで喉がイガイガしてくるもの。“Catch your train”なんかもう第一声から背筋がゾクっときます。初めて聴いた時は衝撃的だったなあ。よって当時一番のお気に入りはこの曲だったね。バンドでコピーしたかったけどキーが高すぎてハナから諦めてたよ。というわけで今回は4thアルバム「狂熱の蠍団」をご紹介。オープニングの“Pictured Life/幻の肖像”で掴みはOK、トリはしっとりと“Yellow Raven”で締めくくるという構成は前作を踏襲してます。そして今回のウリ節全開曲はラス前の“Polar Nights/暗黒の極限”。やっぱこういう曲は下手だろうが何だろうがウリ自身が歌って正解だね。バラードの“In Your Park”は3曲目に配置。前作の“Dark Lady”的なタイトル曲でA面を締めくくり、第2幕のオープニングは前作の“Robot Man”に相当する“Hell Cat”です。ウリが歌ってる時点でちょっと違うけどね。空耳アワー「小さい、小さい、小さいから前隠し♪」でもお馴染みかな。“Crying Days”の翳りのあるテイストは、ヨーロピアンロックの面目躍如でしょうか。メンバーは3rdと同じでゲストkeyも変わらず。そして今回もジャケは思いきり(笑)発禁です。タイトルと相俟ってさすがにコレは…インパクトは発禁ジャケの常連であるスコーピオンズのカタログ中でも随一ですが、誰がどうみてもダメだよね。ただモデルの少女は後年、いい想い出とおっしゃっていたらしい。今作も2010リマスターBlu-spec CD買いました。通算3枚目。当然ですが今回購入のリマスター盤は、例の当たり障りのない差し替えジャケ(オリジナルLPの裏ジャケ)でした。
#85 / TAKEN BY FORCE / 1977
★★★★★★★★★
この5th「暴虐の蠍団」もまたウリがプレイする最後のアルバム(脱退後ELECTRIC SUNを結成)ということで聴かないわけにはいかないでしょう。スコーピオンズに限らず、当時はカセットテープに録音すると繰り返し何度も聴いたもんだから、アルバム丸ごと、どの曲もよく覚えています。ウリ時代の曲は、半音下げチューニング(ヴォーカルのキー問題も常に付きまとう)のせいでコピーしたのは数曲でしたが、やはりウリ時代のスコーピオンズがお気に入りなんですね。これはもう生涯覆ることはないと断言できる。2010リマスターBlu-spec CDも入手しました。このアルバムも通算3枚目。この調子だと…ウリ参加の4枚はもう1度くらい買い直すことになるかもね。今回ドラマーが満を持して登場の八萬ラレベルにスイッチしました。ちなみにゲストkeyは不参加。オープニングの“Steamrock Fever”は少々インパクトに欠ける気もしますが(ウリの曲じゃない)ご安心を。続く“空を燃やせ/We’ll Burn the Sky”で1曲目の弱さを一気に挽回します。”自由への叫び/I’ve Got to Be Free”や“炎のロックスター/The Riot of Your Time”もスリリングでいい。そしてB面1発目の“カロンの渡し守/The Sails of Charon“ですね。これは文句なしの名曲です。リフ、ソロともにウリらしいギターがキレッキレだ。続く”Your Light”もウリ節炸裂曲。”暴虐のハードロッカー/He’s a Woman She’s a Man”を挟んで、8分近い大作”愛のために生きて/Born to Touch Your Feelings“でダメ押し。この曲はフランス語、ドイツ語などで愛のことば(歌詞の一部)を語ってるんだけど、2001年のReissue盤(「TOKYO TAPES」のみでお馴染みだった”Suspender Love“のスタジオバージョンをボートラ収録)で日本語が明瞭になりました。当時必死に解読を試みた同士たちよ、正解は「僕は全てをみんなに与え、君の心の歌になるために、音の精から生まれた。目を閉じてごらん。そしたら僕は君の心に入り、春のように君を目覚めさせてみよう。だって僕は、君の心に触れるために生まれてきたのだから。」だったよ。この朴訥とした語り口の女性は誰?森田童子を思い出してしまうのは私だけでしょうか。Wikiによれば…友人もしくはファンとのこと。JunkoさんとMutsumiさんらしい(笑) あとはスリナムの人と、ルーマニアの人と、アメリカの人とタヒチの人だってさ。調べてみるもんだね。ちなみに今回のジャケも“お墓で銃撃戦”などけしからんということで3作連続の差し替え(欧米のみ)。
#110 / LOVEDRIVE / 1979
★★★★★★★
高校時代、バンドのメンバーでSCORPIONのライブに行こうと盛り上がってね、というのは師匠が前年にウリのSCORPIONSを見ていたから。その来日公演後にウリが脱退していたので、師匠はラッキーだった。しかしながら今回はウリの代役でマイケルが来日するってんで、意気揚々と中野サンプラザへ出掛けて行った。その時点では神が蠍団に戻るとばかり思っていた。一時的なヘルプだとしてもだよ、それはそれで貴重な公演になるはずだったのに。会場へ着いてみると…人だかりの中に神来日キャンセルの張り紙。「え~」「何だよ~」「ふざけんなよ~」我々も含めその場にいたファンたちは不満タラタラでしたな。結局、代役の代役として起用された、当時無名のマティアス・ヤプス(当時はマシアス・ジャブス表記だったかな)を見るハメになったわけさ。ヤプスも上手いんだろうけど(ルドルフとのツインギターはビシッとキマッていた気がする。むしろルドルフが間違えてた?)、そもそも知らない人だし、仙人や神のようなオーラは纏ってないわけで、唯一の救いはマイネの熱唱というなんとも歯痒いライブでした。マイケルの件がショックすぎて、イマイチ集中出来なかったのを覚えています。で、正にその時期を象徴するのがこの6thアルバムなんですね。UFOを脱退した神が5曲に関与しております。その他が新メンバーとなったヤプスの担当という構成。そんないきさつの中リリースされたアルバムだったからよく聴きました。オープニングは意外にもミッドテンポの“日曜がの愛劇/Loving You Sunday MorningⓂ”。劇的で素晴らしい。続いて高3の時にコピーしたアップテンポの“Another Piece of MeatⓂ”、文句なしのマイケル印。美しくも哀しいバラード“果てなきロード/Always Somewhere”に続くのは、ドラマチックインストの“Coast to CoastⓂ”、さすがマイケルと納得したところでA面終了。B面のトップはマイネの歌唱が炸裂する、ある意味お約束のファストチューン“Can’t Get Enough”。次はアルバムの変化球的役割を果たす“瞑想のレゲエ/Is There Anybody There?”。そして文句なしのタイトルチューン”Lovedrive”Ⓜと6分半の感動的大作“免罪の日/HolidayⓂ”で一気に畳み掛けます。マイネの声もここまでは全開バリバリでしたが、ポリープは着々と育っていたんだね。仙人と神がゲスト出演したヴァッケンのライブDVDがリリースされています。ぶっちゃけ、マイネと神は往年の輝きに翳りあり(年相応と言うべきか)なのに対し、ウリのオーラたるや「さすが!」としか言いようがない。一人だけ違うステージ(天上界ですかね)に立っているかのような錯覚に陥ってしまう。皆さん、お待たせいたしました!今回のジャケも祝発禁です(笑) ヒプノシスのストーム・トーガソン作なんだけど…誰が作ってもダメなものはダメなのね~。
#130 / TOKYO TAPES / 1978
★★★★★★★★
スコーピオンズのライブ作品の中ではもちろんのこと、ハードロック史に於いても名盤といえる「TOKYO TAPES」です。洒落たタイトルが示す通り、日本公演の実況録音盤で、収録日は1978年4月24日と27日の中野サンプラザ。師匠が見に行ったのがこの日だったのか本人に確認しないとわかりませんが、どうやら23日(初日)にもサンプラザ公演があり、しかもその日が日曜日であることから、今作収録日とは別日だった可能性が高い。いや、高くないか。都合よく日曜日のチケットが取れたかわからないし、師匠であれば(師匠でなくても)学校を休んででも行くはずだから。来日後にウリは脱退してしまい、皆で行った翌年はヤプスだったから…これは今さらながら悔やまれる。まだ高校に入学したてで、同じクラスだったとはいえ、4月の段階だとほぼ会話もなかったし、そもそもスコーピオンズに入れ込む前だったから、この件に関してはタイミングが悪かったんだね。文句なしのパフォーマンスです。ライブにしては音もいい。2枚組のヴォリュームにも大満足です。そういえば、最初に発売されたのは、曲を削って1枚に纏めたダイジェスト的なCDだったから、その後2枚組フォーマットが出て買い直すハメになったんだよね。ちなみに、美しい薔薇の花ジャケは日本盤のみの仕様でした。ナイスな原題を台無しにする邦題は「蠍団爆発」。言いたいことはわかるけど…。オープニングは、当時ライブでしか聴くことができなかった“All Night Long”で、マイネの歌唱がいい意味で暴走してます。張りのある声が伸びる伸びる。それに続くのは真のオープニングともいえる“幻の肖像/Pictured Life”、元気が有り余っているのか、マイネの声がシャープ気味に弾ける。“暗黒の極限/Polar Nights”はウリの真骨頂で、ジミヘン風のこの曲に関してはライブバージョンの方が好きだな。”In Trance”、“空を燃やせ/We’ll Burn the Sky”、”Suspender Love”、”安息を求めて/In Search of the Peace of Mind”、“Fly to the Rainbow”で第1幕の終了。後半戦は、”暴虐のハード・ロッカー/He’s A Woman, She’s A Man”、“Speedy’s Coming”、“Top of the Bill”、ロックンロール・メドレーで小休止の後、”Steamrock Fever”、“Dark Lady”、日本公演の隠し玉”荒城の月”を挟んで、”Robot Man”、と従来はここで終了していましたが、2015年にデラックス・エディションがリリースされまして…さらに10分近いライブバージョンの”Hell Cat”、”Catch Your Train”、隠し玉第2弾の”君が代”、別日の”暗黒の極限”、”暴虐のハード・ロッカー”、”トップ・オブ・ザ・ビル”、”ロボット・マン”が繰り返され、2度目の大団円を迎える。まさに名曲のオンパレード、バンドの代表曲を網羅した素晴らしい選曲です。2015年盤に関して一つ残念なのは、おそらく収録時間の関係でdisc1に”荒城の月”までしか入らず、ライブの締めであるはずの”ロボット・マン”がdisc2の1曲目に回されてしまったこと。そのあとに、ボートラとして別日の重複曲が続くから、結果としてdisc2は、”ロボット・マン”で始まり”ロボット・マン”で終わるという釈然としない構成になってます。
#184 / BLACK OUT / 1982
★★★★★★
ウリ脱退後の第1弾「LOVE DRIVE」は、オリジナル・メンバーだったマイケル・シェンカーの参戦で何とか踏みとどまりました。さすがにウリ時代の「翳り」は無くなってしまいましたが、シンプルに曲が良かった。続く「ANIMAL MAGNETISM」も、雰囲気は結構好きだったりするから、まだ楽しんで聴いていた。で次にリリースされたのがこの8thアルバム「蠍魔宮」というわけ。世間ではルドルフのカミソリ・リフ炸裂盤とされているようですが、何より重大なのは、このタイミングでクラウス・マイネの喉の手術があったということ。以降ワイルドな歌唱は封印され、次作「禁断の刺青/LOVE AT FIRST STING」にて、現在の路線が完成するという流れになります。80年代初頭のメタルブームに乗ったというか、マイネの喉に負担がかからない歌唱に合わせた曲づくりというか、結果的にアルバムはトリプル・プラチナムという成功を手にしたのだから、バンドとして正しい選択だったということですね。“Wind of Change”で平和の象徴にまで上りつめるとは想像できなかった。そんなわけで、今作は過渡期の1枚と言えるでしょう。マイネが手術をしたため、デモの段階ではドン・ドッケンが歌ったらしい。本編を聴く限り、手術後とは思えない熱唱もあるけどね、コレでも全力ではないのでしょう。”Black Out”、“Now!”、“Dynamite”あたりは、過去作品に比べても遜色のない歌声が素晴らしいけれど、次のアルバムから完全に封印されてしまいます。これらワイルドな曲がある反面、“官能の夜/No One Like You”や、空耳アワーでお馴染みの“You Give Me All I Need”(雪見オ〇〇ー)、”静寂の煙/When the Smoke Is Going Down”などが、今後の路線の予告編となっています。個人的には、蠍団の熱が冷めるきっかけとも言えるアルバムになってしまった。とは言いつつ“Dynamite”をコピーしましたな。
#274 / LONESOME CROW / 1972
★★★★★★
記念すべきデビューアルバム「恐怖の蠍団」です。ドイツにはクラウトロックという歴史があって、多少なりともその流れを汲んだ音楽を演っています。ジャーマンプログレの源流ともいえるみたいだけど、要するにあのサイケな電子音楽のことでしょうね。ちなみに今作のプロデューサーはクラフトワークとの仕事で有名な人。さすがにシンセは入ってませんが、確かにこの1stはウリ加入後のヨーロピアンフレイバー溢れる哀愁ハードロックとは全くの別物で、ジャジーな雰囲気も含めむしろ貴重といえるかもしれない。何はともあれ、ギターを弾いているのがUFOに引き抜かれる前の16~17歳の“神”ですから。シェンカー兄弟揃い踏みだね。てことは…名曲“Rock Bottom”を含む「PHENOMENON/現象」は18~19歳の頃の作品ということになる。驚愕の事実でしょ!? そりゃあ天才とか神とか言われるよね。マイケルは高校行ってないのかな。マイナーで独特な雰囲気が漂うアルバムですがよく聴きました。初めて聴いたスコーピオンズの曲は、ここに収録されている“It All Depends”だったと記憶している。邦題の付け方がBLACK SABBATH状態だね。担当者が同じなのか。”In Search of the Peace of Mind/安息を求めて”とか”Inheritance/悪魔の血が騒ぐ時”とか。YouTubeで“I’m Goin’ Mad/狂熱の蠍団”を見ることができるので是非ご覧あれ。髭達磨状態のマイネが絶叫してるよ。これを続けてたらポリープの一つや二つ出来たって不思議じゃないってくらい(笑)凄まじいです。
#319 / ANIMAL MAGNETISM / 1980
★★★★★★
スコーピオンズに求める好きな要素がかろうじて残る7thアルバム「電獣~アニマル・マグネティズム」です。直訳すれば動物的魅力?前作「LOVE DRIVE」はマイケル・シェンカーがウリの穴を埋めた形になりましたが、今作からリードギターは全面的にヤプスが担当、その後長きにわたって重責を務めることになります。重責とはいえ、間もなくメロディックパワーバラード路線になるからね、リードギタリストにマイケルやウリのようなカリスマは必要ないわけ。解散を決めたラストアルバムが「昔に戻った」と好評でしたが、何をどうやったってウリ時代には戻れない。クラウス・マイネの声も然り、喉は生ものなので。シンガーの宿命ですね。お気に入りはオープニングの“Make It Real”、大々的にクラシック楽器を導入(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ダブルベース、オーボエ、フレンチホルン)した珠玉のバラード“Lady Starlight”(マイネの歌唱もヤプスのギターも最高)、トークボックスを使用し、淡々としたミッドテンポからマイネ節への展開が素晴らしい“The Zoo”、ラストのタイトルチューン(インストかと思いきや歌入り、1stアルバムに収録されていそうな不穏さがいい)あたり。昔からのファンからすればありがたくない方向性にシフトした結果、81年の第1回モンスターズ・オブ・ロックへの出演を皮切りに、一気にメジャーバンドへと駆け上がるのでした。よかったね。ちなみに今回のアートワークも前作に引き続きヒプノシスなのですが、6作連続で発禁ジャケに認定されました。ギネス記録じゃない!?
Q:今回のジャケはどこがマズいのでしょう?
A:男性の腰の位置に女性の顔があるから。
警戒されすぎじゃないかスコーピオンズ!
#632 / LOVE AT FIRST STING / 1984
★★★★★★
現在のビッグなスコーピオンズの方向性が完成した9thアルバム「禁断の刺青」です。ずいぶん行儀よくなっちゃったね。針を抜かれた蠍だね。売れ線狙って大成功だったね…などと厭味ったらしいことをぐだぐだ言ってはいますが…結局のところよく聴いたかも(笑) 何たって1番好きなヴォーカリストだからね。全盛期の喉は失えどもベーシックな声が良くて歌唱も申し分なしとくれば何をやってもOKってコトなんだろうな。羨ましい話さ。我々よりもちょい下の世代だと、これこそがスコーピオンズって人もたくさんいるでしょうね。確かに曲の完成度(ソフトなハードロック?として)は高いです。キャッチーな歌メロ(実はそこがイヤ。サビメロのリフレインとかコーラスとか…ウリもコレが嫌で脱退したんだと思う)も充実してます。そして今回のジャケも…懲りないね~(笑) 遂に解散しちゃうのか~。マイネとルドルフは1948年生まれだからすでに還暦を過ぎてるもんね。レコーディングだけならイケるんじゃないの?寂しいね。※解散表明は撤回されました
#846 / SAVAGE AMUSEMENT / 1988
★★★★★
前作『LOVE AT FIRST STING』の勢いを受け継ぐ10thスタジオアルバムです。アメリカでは全カタログ中で一番売れたらしいけどね…それと反比例するようにこの辺りからいよいよ記憶が曖昧になってるね。先日CDを持っていないことに気付いて安い中古盤を買ったばかり。いや、聴いたことがないわけじゃないよ。貸しレコード屋で借りたかタジに録ってもらったかは忘れたけど探せば今でもカセットテープがあるはず。昔からのファンにとってはやっぱりクラウスの手術が転機なわけで…前作でちょっと違うなと思った。良く言えばキャッチーなんだけどサビメロが曲のタイトル連呼パターン…これがどうにも安易に思えて好きになれない。とは言うもののクラウスの声が聞こえるだけでわくわくしちゃうんだね。手術したって凡百のヴォーカリストに比べたら遥かに素晴らしい声が出てるもの。『VIRGIN KILLER』当時のような神憑り的熱唱は伝説として語り継がれればそれでいい。誰だって歳を重ねれば衰えるさ。コレはコレで納得しようじゃないか。
#1008 / WORLD WIDE LIVE / 1985
★★★★★
「TOKYO TAPES」に次ぐ2ndライブアルバムで前作とのカブりはありません。収録曲は6th~9thからのベストチョイスです。「LOVE DRIVE」から5曲、「電獣」から2曲、「蠍魔宮」から4曲、「禁断の刺青」から5曲、その他という構成。特に「LOVE DRIVE」からの選曲がうれしい。ですが、実はそれほど思い入れはないのです。確かカセットテープはあったけどね。マシアス・ジャブス(笑)だし…何よりクラウスが熱唱できなくなってるから。喉に負担がかからないようしてる。“Another Piece of Meat”のフェイクはモンスターズ・オブ・ロックで聴きなれたヴァージョンだから個人的には問題なし。それどころか高校時代にコピーしたのはこのヴァージョンでした。しかし、同じくコピーした“Dynamite”と“Can’t Get Enough”はどうだろう?キーを下げてるよね。コレはダメでしょう。違和感しか感じません。ちなみみに、現在も同じようなパフォーマンスであることはヴァッケンのライブDVDで認しました。今思えば「TOKYO TAPES」は凄かったからね。ハリがありすぎてビブラートが暴走してたもの(笑) だったらインスト(Coast to Coast)で休めばいいと思うけどギターで参加してたし。あっ、歌ってないから喉は休んでるのか!あれはSUPER ROCKの映像だったかな。それにしても…DEEP PURPLEやJUDAS PRIESTは言うに及ばず、昔の日本公演の実況録音盤は出来がいい。貴重な音源ですな~。
#1179 / CRAZY WORLD / 1990
★★★★★
この11thアルバムは旧体制のスコーピオンズ最後のアルバムということになります。ウリと同時に加入したフランシス・ブッフホルツ(B)が脱退しちゃうんだね。と同時にバンド史上いちばん売れたアルバムでもあり見事に有終の美を飾ってめでたしめでたし…とはならない(笑) 解散宣言…撤回表明…結局まだまだ現役ですな(笑) 最後の最後でプロデューサーがディーター・ダークスじゃないってのもまた微妙な話だね。このアルバムは、とにかく“Wind of Change”であり、HRバンドとしては異例のロシア親善大使拝命という事に尽きます。ベルリンの壁が崩壊した年に参加したライブがきっかけだったみたいね。この時期のスコーピオンズに過度の期待はしてないから、それなりに高品質なアルバムと言っておきましょう。中でも「BLACK OUT」当時にまで記憶を遡らせてくれる要素が垣間見える“Don’t Believe Her”と#8“Hit Between the Eyes”と“Send Me an Angel”が個人的には良かった。ラストの曲でもマイネの掠れ声は“愛のために生きて”みたいで懐かしい感じがした。全力で歌えなくても声がいいし上手いし、スタジオ録音なら完璧だね。ちなみに今回は当たり障りのないジャケですが、スコーピオンズだけに卑猥に見えてしまう病…
#1556 / BEST SELECTION / 1994
★★★★★
我が青春のスコーピオンズのカタログはほぼ揃っているのでベスト盤は基本ノーマーク。でもね、いいの見つけちゃったよ。ウルリッヒ・ロート時代のベスト盤があるじゃないすか!? “荒城の月”がトリだから日本の企画盤でしょう。全16曲です。ウリ時代の2nd~4thおよび「TOKYO TAPES」からバランスよくチョイスされております。発売当時としては貴重だったと思われる“サスペンダー・ラブ”のスタジオ・テイクも収録。ファンからしてみれば不満もあるわけですが、それを言ってたらキリがないってのは毎度のこと。気に入らないなら自分で編集しなさい、これで決着ね。他人が選んで並べたベストもまた一興と楽しめる人だけが手を伸ばせばよろしい。詳しく調べたわけじゃございませんがね、ウリ時代に限定したベストってありそうでないと思うんだけど。普通に考えれば、売れてからの曲を混ぜたくなるもんね。ある意味マニアックとも言えそうですが、私も含め「ウリ時代がピーク」と認識しているファンは結構多いはず。喉を傷める以前のクラウスの熱唱。ウリのプレイもHR的にはここがピーク。新旧どちらのファンにもお勧めです。
#2008 / FACE THE HEAT / 1993
★★★★
前作収録の”Wind of Change”がヒットして大金が動く…すると印税云々でフランシス・ブッフホルツがクビになってしまうのでした。ブルース・フェアバーンがプロデュースしたこの12thアルバムのベーシストはラルフ・リーカーマン。96年にはハーマン・ラレベルも脱退。どうしたSCORPIONS!ちなみに現在はよく知らないベーシストとミッキー・ディー(MOTORHEAD)がリズム隊ですがね、現状の音楽性であれば誰でもいいって気がする。さて今作は、オープニングの”Alien Nation”はまずまずとして、他はまあ可もなく不可もない出来。ヤプスもね~、加入以来ずっと変わらないプレイというか、ギターはルドルフだけでも成立するんじゃないかと思ってしまうくらい存在感が薄い。こうなるとクラウス・マイネの美声を堪能するしかないわけで、やはりスタジオ作品においてはかなりのレベルまで声を出しているということが確認できて喜ばしい。スクリームをはじめ、そんなに張り切って大丈夫かと思う場面が多々あるのは往年のファンからするとうれしい限りだ。バラード系の掠れ声はあいかわらず絶品です。エンディングの”Daddy’s Girl”がまさにソレであり、ソフトな掠れ発声と一人ハモリ(もちろん多重録音だよ)を楽しむことができます。