ELECTRIC SUN
ELECTRIC SUN(Germany/独)
#29 / BEYOND THE ASTRAL SKIES / 1985
★★★★★★
ELECTRIC SUN名義では最後の作品となった3rdアルバム「アストラル・スカイズ~天空よりの使者」です。とはいえ実質ソロアルバムみたいなもので、メンバーと呼べるのはマイケル・フレクシグとクライブ・バンカー、ウレ・リトゲンは数曲のみ、ゲストにジーノ、ブルース・ディッキンソンの後釜としてSAMSONに入った人、あとはバッキングヴォーカルの女性男声シンガーたちが参加。神とかゴッドとかいっぱいいるけどウリは仙人にあらず、宇宙だった。ZENOが想起されるアジアンなメロを含む、スコーピオンズ時代とは別の顔がここにはある。ギタリストだから歌は…みたいなレビューが定番ですがね、ギターも歌もそういうのを超越したところにあるわけよ。個人的には歌唱(と呼べる代物ではないが)も好きですけど。弱点を補うべくゲストシンガーたちが活躍しているのも今作の大きな特徴の一つですね。特に女声かな。スカイギターお披露目作品でもあり、泣きまくりというか、歌っているといっても過言ではなかろう。ウリの音はウリしか出せないと後に競演した山本恭司が言ってたよ。ご存知の通り、スカイギター以前にも23フレット仕様のフェンダー・ストラトキャスターを使っていた時期がありまして、更なる高音域に対する欲求を満たすために開発されたのが32フレット仕様のオリジナルギターというわけ。27フレット以降は一音刻みなんですと。半音階は隣の弦やチョーキングでカバーすると。指板はスキャロップド加工。1st、2ndよりハードさは減退したが、それを補って余りある作品になった。この後ソロ名義になってからはそこまでの思い入れはないからね(「TOKYO TAPES REVISITED」等SCORPION関連は別)そういう意味でも今作は思い出深い。特に”I’m a River”が。
#170 / FIRE WIND / 1981
★★★★★★
78年にSCORPIONSを脱退したウルリッヒ・ロートが結成したバンドの2ndアルバムです。脇を固めるメンバーは、前作に引き続いてのウレ・リトゲン、ドラマーはシダッタ・ゴータマに交代している。ゴータマ・シッダッタ、教科書ではゴータマ・シッダールタ、そう、お釈迦様ですね。仙人に釈迦ですよ、最強コラボです。こうなるとウレにも何らかの肩書きが欲しいところ(笑) デビュー作はジミヘン愛が溢れすぎている故ある意味マニアックでしたが、今作はいい具合に80年代らしいキャッチ-さが加味されました。特にA面の楽曲は、しっかり練られたと思われる歌メロがいいね。ただし歌っているのがウリだから、正確なメロディや符割りは謎(笑) そもそも細やかなスコアが存在したのかも怪しいし、この音源を譜面に起こすのも極めて難しかろう。スコーピオンズに比べると音質がイマイチではありますが、些末な事など総て吹き飛ばしてしまうギタープレイが炸裂するオープニング”Cast Away Your Chains”で一発KOですわ。続く”Indian Dawn”も同様に歌って弾いて泣いて…スローな”I’ll Be Loving You Always”ではウリの歌唱が悪目立ちしてしまうが、泣いて泣いて泣きまくるギターで帳消し。そして圧巻の”Fire Wind”でA面が締めくくられる。その歌唱には鬼気迫るものがあり、もちろんギターも凄まじい。第2幕の開演を告げる小曲”Prelude in Space Minor”に続く”Just Another Rainbow”でジミヘン愛が炸裂。ウリが歌わずして誰が歌うのかってくらい嵌ってます。アクセントの役割を果たす”Children of the Sea”、アコギで始まる冒頭がボブ・ディランを彷彿させる”Chaplin and I”はギターのトーンも終始控えめに…満を持して繰り出されるのは圧巻のエンディング曲”Enola Gay(Hiroshima Today?)”ですね。タイトルは、広島に原爆を投下したB-29戦略爆撃機(東京大空襲の際には300機以上のB-29が飛来、投下された焼夷弾により火災旋風が発生、一晩で83,000人が死亡、26万戸の家屋が消失したのでした)の名前だ。この二部構成曲の前半からもSCORPIONS時代のジミヘン曲が想起され、ちょっと違和感がある「ヒロシマ」の連呼が熱い。曲の後半は弾きまくって、泣いて、フェードアウト…ウリのプレイを堪能できる素晴らしい楽曲にて、素晴らしい1枚が終幕となります。ウリのボーカルに対して好意的なコメントは、まあ見かけませんが、「歌」だと思うからそうした評価になるわけで、デスメタル・シンガーに文句を言っているようなものではないかと。相当気合が入ってるし(妙な箇所で熱唱してしまうのはご愛敬)、「〇〇が歌ってたら」なんて考えちゃダメ。素敵なジャケはウリのパートナー、モニカ・ダンネマン(ジミ・ヘンドリックス最後の恋人)の作品です。
#419 / EARTHQUAKE / 1979
★★★★★
ウレ・リトゲン、クライヴ・エドワーズ(元PAT TRAVERS BAND)と結成したバンドのデビューアルバム「天地震動~ジミ・ヘンドリックスの魂に捧ぐ」です。ウリのギターが堪能できるのはいいんだけどね、SCORPIONSを辞めてまでやりたかったのがコレ?と当時は納得できませんでした。ストラトで太い音を出してたウリが最高にカッコよかったからね。スカイギターはいかにも仙人然としているけど線が細くて物足りない。ここではまだスカイギターではない(初号器完成は83年)がSCORPIONSサウンドでもない。オープニングはバンド名と同じ”Electric Sun”で、この時点でウリがやりたいことが集約された曲だと思う。仙人様は”太陽”と”宇宙”に特別なモノを感じているのだ。特にジミヘンがどうとかいう感じはないけどね。”Burning Wheels Turning”、”Japanese Dream”で東洋のメロが聴けるのは、前年にSCORPIONSとして来日公演を行った経験によるものだとか。”荒城の月”や”君が代”にインスパイアされているらしいです。ラストのタイトルチューンはジミヘン的でもあり、そういう意味ではアルバムのハイライトとも言えますが、次作の”Enola Gay(Hiroshima Today?)の前哨戦という感じかな。太陽をモチーフとしたと思われる素晴らしいアートワークは、ウリの恋人モニカ・ダンネマン(ジミヘン最後の恋人)の作品。赤いオーラを纏ったウリが描かれていますが、実は裏ジャケと対になっており、その裏ジャケには黒いオーラを纏ったモニカの姿が。精神世界で繋がっている高尚なカップルという気がします。それにしてもだ、ジミに捧げるアルバムを、ジミの元カノと作っちゃうなんてね、さすが仙人としか言いようがない。