SAVATAGE
SAVATAGE(US/米)
#331 / GUTTER BALLET / 1989
★★★★

オリヴァ兄弟(Key&VoのジョンとGのクリス)を中心に結成されたバンドの5thアルバムです。記憶が確かなら、最初に聴いたのは何かしらのコンピ収録曲、あとは師匠の部屋で2nd「POWER OF THE NIGHT」(LP)を聴かされたと思う。その時は、たいしたことないねってことで決着したはず。ところが、CD時代が到来し好レビューだった今作をきっかけとして嵌ってしまい、4thアルバム「HALL OF THE MOUNTAIN KING」から最終作である11th「POETS AND MADMEN」まですべて聴くことになるのでした。それだけお気に入りのバンドってことです。さて今作は、バンドの方向性をプログレッシブメタルにシフトした作品とされています。ジョン・オリヴァのピアノが増量していますが、後の作品に比べると、まだまだメタルバンドの音。どのアルバムにもいい曲が必ず2~3曲ある印象のバンドでね、今作ならタイトルチューン”Gutter Ballet”がダントツの出来で、次点が”When the Crowds Are Gone”、”Hounds”あたりになるのかな。プログレメタルの真骨頂は長めの曲でこそ発揮されるわけだね。そこに絡む2曲のインストも効果的に機能している。ジョンの作曲能力もさることながら、何といってもこのバンドはクリス・オリヴァのギターが好きでした。音色もいいし、フレーズもいい。しかしご存知の通り、この後2枚のアルバムを遺し、1993年に交通事故で亡くなってしまいました。個人的にはランディ・ローズと同等に語られるべき伝説だと思います。
#516 / STREETS A ROCK OPERA / 1991
★★★★★

バンド初のコンセプト作品となる6thアルバムです。前作「GUTTER BALLET/ガター・バレエ」ほど売れませんでしたが、これもまたサヴァタージの代表作と言っていいでしょう。前作からプロデュースを担当しているポール・オニールがストーリーを書き、歌詞はジョン・オリヴァとの分業。かつてドラッグの売人だったロックスター、D.T.ジーザスの苦悩が描かれているらしい。タイトルに偽りなしのオペラチックな仕上がりで、従来のドラマチックメタルとは一線を画す作品。ここにきてジャンルの壁を超えた気がする。オリヴァ兄弟はかっこいいことをやってましたね。クリスのギタープレイと、ジョン(兄)のソングライティングおよびピアノがバンドの肝で間違いない。まず冒頭にナレーションが入る”Jesus Saves”から一気に引き込まれます。元々は曲間毎にナレーションが収録されていたところ、レコード会社の意向により尺を削ることになり、この曲以外はすべてカットされたらしい。さらに、この曲と”Can You Hear Me Now”では、ジョンがピアノとドラムを、クリスがギターとベースを兼任している。とりあえずリフが印象的でカッコいいです。アルバムのハイライトは、エンディングの”Somewhere in Time/Believe”。この、2曲がくっ付いた9分の楽曲にて、アルバムは感動のフィナーレを迎えます。次作をリリース後、交通事故で亡くなったクリスの墓石には、“Believe”の歌詞の一節が刻まれているほど、兄弟にとって会心の出来だったということでしょうね。その後クリスの後釜には、アレックス・スコルニック(TESTAMENT)やアル・ピトレリ(MEGADETH)が迎えられますが、やはりサヴァタージのギターはクリス・オリヴァだったと再確認させられるのでした。
#2169 / EDGE OF THORNS / 1993
★★★★

ジョン・オリヴァがツアー活動休止を宣言(ソングライティングとキーボードでバンドには在籍)したことにより、新たにザッカリー・スティーヴンスが加わった7thアルバムです。そのためか、ヴォーカルが目立つミックスになっているような気がする。肝心な実力のほどは…悪声という意味ではジョンと変わりないのですが、力強い声質はジョンより太目で似て非なるもの、やや抑揚に欠けるところが課題…といったところ。収録曲は全曲、ジョン、クリス、ポール・オニールの共作となっております。アルバムのハイライトは、オープニングのタイトルチューンから2曲目の”He Carves His Stone”でしょうか。タイプの異なるこの2曲が、SAVATAGEサウンドの中核をなす2大要素だと考える。劇的なやつとストレートなやつね。中盤には2曲のインストが配され、#5の”Labyrinths”は続く”Follow Me”のイントロダクション的な役割を果たしています。この辺りもある程度の盛り上がりを見せますが、過去作品と比べると終盤が弱いかな。もうちょい盛り上がって終わりたかったね。ジャケに描かれている女性は、クリスの奥さんがモデルらしいですが…これがクリス最後のアルバムになってしまうとは…何ともやりきれませんな。
#2313 / POETS AND MADMEN / 2001
★★★★

11枚目の作品にして4作目のコンセプトアルバムです。今回の題材はピューリッツァー賞写真家ケビン・カーターで、同賞受賞後に自殺してしまいました。受賞作「ハゲワシと少女」が、報道か人命か論争に発展、20代で躁鬱病を患い2度の自殺未遂、そして薬物依存という状況と相俟っての顛末だったらしい。それはさておき、難産であったことが十分に伺えるアルバムです。アル・ピトレリ(G)がMEGADETHに引き抜かれ、ザッカリー・スティーヴンス(Vo)も家庭の事情で脱退という苦難を乗り越えてどうにか完成させました。レコーディング参加は4名、歌っているのはジョン・オリヴァだが特に違和感はない。楽曲は「DEAD WINTER DEAD」の手法を踏襲した雰囲気かな。あとは「STREETS:A ROCK OPERA」若しくは並行して活動しているTRANS-SIBERIAN ORCHESTRAの作品群とか。要するに、プログレッシブメタルとして認知されて以降のSAVATAGEらしい作品に仕上がっている。英語が分からずとも、全編に亘って先に述べた写真家の苦悩が描かれているであろうことがヒシヒシと伝わってくる感覚。ボーカルにボーカルを重ねて煽ってくるあたりはジョン・オリヴァの真骨頂ですね。これまで通り総じて曲の尺は長めであり、最長10分超の”Morphine Child”が今作のハイライトということになるでしょう。日本盤ボートラとして”Jesus Saves”と”Handful of Rain”の’97ドイツ公演が収録されている。