Stop thinking you can't do things and start thinking you can. Your future is whatever you make it, so make it a good one.

BOB DYLAN

BOB DYLAN(US/米)

#128 / DESIRE / 1976

★★★★★

Bob Dylan desire (320x320)

デビューシングル(アルバムも)がリリースされたのが1962年ということは、あのビートルズと同年デビュー、まさにフォークの神様と言われるレジェンドです。個人的にリアルタイムだった今作「欲望」はすでに17枚目の作品でした。前年に発表した「血の轍/BLOOD ON THE TRACKS」同様に全米1位ダブルプラチナム・アルバム、ということは、この時点ですでにレジェンド扱いだったかもしれませんね。この頃は「風に吹かれて/Blowin' in the Wind」など初期の作品とは違いフォーク・ロックなテイストになってますが、独特の歌い回しで社会を斬るスタイルは1ミリもブレておりません。日本のフォーク系の人たちも神様の動向に影響を受けまくっています。そんなわけで、“ハリケーン/Hurricane”収録のコレが、思い出深いアルバムなんですね。きっかけは例に漏れずラジオ。陽水を録ってくれたT君の影響もありました。殺人の冤罪で投獄されたボクサー、ルービン・ハリケーン・カーターに関する歌だと教えてくれた。ディランは鬼気迫る歌唱で長尺の歌詞を歌い上げ、彼の無実を訴えます。その結果…再審→1988年釈放というミラクル。フォークの神様が降臨した瞬間ですね。その他”イシス/Isis”、“モザンビーク”/Mozambique、“コーヒーもう一杯/One More Cup of Coffee”、”オー、シスター/Oh, Sister”、“ジョーイ/Joey”(72年にNYで暗殺されたマフィアの殺し屋、ジョーイ・ギャロ、通称クレイジー・ジョーの追悼歌)、デュランゴのロマンス/Romance in Durango“、“ブラック・ダイアモンド湾/Black Diamond Bay”、“サラ/Sara”…個人的な思い入れにかかれば捨て曲なし。基本的に録り直しはしないようで、間違いなく外している箇所も多々ある(「ハリケーン」の中にもグズグズのところがあって完コピが難しい)けれどそのまま収録。ディランが、NYのミュージシャンに片っ端から声をかけたため、レコーディングスタジオに人が溢れかえっていたという理由で、エリック・クラプトンは参加を見合わせたそうです。結果、神様と一生懸命シンクロしようとする無名ミュージシャンたちの、緊張感が独特の雰囲気を醸す(アコーディオンやコンガによるラテンフレーバーも漂う名演)作品になりました。即興に近い特徴的な女性コーラスは、唯一プロデビューしていたエミルー・ハリスという人がメインみたいだけど、あの「ナッシュビル」のロニー・ブレイクリーも参加しています。もしクラプトンが参加していたら雰囲気が変わっていたのかな?



#449 / THE TIMES THEY ARE A-CHANGIN' / 1964

★★★★

Bob Dylan the times they are a-changin'

3rdアルバム「時代は変る」です。演奏はギターとハーモニカ、タイトル曲をはじめ半分以上がプロテスト・ソングで、この時期のディランならではの作品となっている。全米20位、全英4位をそれぞれ記録しました。自由の象徴ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の翌年に発表されたアルバムでもあるのですが、暗殺の3週間前にレコーディングは終了していました。ラストに収録された”哀しい別れ/Restless Farewell”は最後にレコーディングされている。予言でしょコレ。”時代は変る”で始まって”哀しい別れ”で終わるアルバムが、ケネディ暗殺直前に作られていたなんて出来すぎだよね。”船が入ってくるとき/When the Ship Comes In”(曲調は”時代は変る”に似ている)も予言的な歌であり、そりゃあフォークの神様と言われるわけだ。日本でもこのアルバムから影響を受けて、中川五郎→高石友也の“受験生ブルース”や、太田裕美の“木綿のハンカチーフ”が生まれています。後者は”スペイン革のブーツ/Boots of Spanish Leather”の歌詞をモチーフにしている。どうやら恋人(2nd「THE FREEWHEELIN’」のジャケで一緒に歩いている女性)との関係を歌ったものらしい。♪「愛する人よ 朝には私は旅立つ 海の彼方からあなたに送れるものはあるかしら? 降り立ったその場所から」「愛する人よ 何も送らなくていいんだよ 欲しいものはない 君がまっさらのまま帰ってくれさえすれば 孤独な海の彼方から」♪ 男女が入れ替わっていますがそのままでしょ?それからもう一つ。「THE WANDERERS/ワンダラーズ」という曲および映画があります。「アメリカン・グラフィティ」の東海岸版という趣向の作品で、アメグラで描かれた1962年の翌年、1963年が舞台になっています。終盤、ケネディの暗殺を市民が悲しむ場面を挟んで、主人公リッチーが、好きだった女性を追いかけると、彼女はコーヒーショップへ、そこでは当時新進気鋭のシンガー、ボブ・ディランが”時代は変る”を歌っている。彼女とは住んでいる世界が違うことを痛感する切ない場面でした。結局のところ”時代は変る”が突出したアルバムですが、色々と付加価値があるゆえ特別な1枚になりました。ちなみに、セネター、コングレスマンという単語を知ったのもこの曲でした。♪Come senators, congressmen please heed the call♪



#865 / THE FREEWHEELIN' / 1963

★★★★

Bob Dylan the freewheelin' (320x320)

名曲“風に吹かれて”を収録した2ndアルバムです。他“北国の少女”や“戦争の親玉”や“はげしい雨が降る”や“くよくよするなよ”など印象的な曲が多いですね。どうやらトラディショナル・ソングの改作が混在しているらしく、楽曲の充実感はそのせいかもしれません。この生々しい歌声(語り)は歌詞カード片手に聴きたいね。使用楽器はほぼアコギとハーモニカ。BEATLESのジョン・レノンも好んで聴いていたとか。ジャケは当時の恋人スーズ・ロトロとの楽しげなツーショット写真。いいね!アルバムの最終曲“I Shall Be Free”でポンポン飛び出す人名に時代を感じます。ブリジット・バルドー、アニタ・エクバーグ、ソフィア・ローレン、ウィリー・メイズ、マーチン・ルーサー・キング、エリザベス・テイラー、リチャード・バートン…。歌詞の中にTV Dinnerという単語も聞き取れますが、コレを初めて知ったのはジム・ジャームッシュの映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」でした。テレビを見ながら食べられるワンプレートのお手軽ディナー…つまり冷凍食品なんだね。映画の中ではハンガリー人から見たアメリカの象徴として使ったんだと思う。モノクロで淡々としていて不思議な映画でした。



#983 / BLOOD ON THE TRACKS / 1975

★★★★

Bob Dylan blood on the tracks (320x320)

75年なのにもう15枚目のスタジオアルバム(ちなみに2012年までに35枚)となる「血の轍」です。最初に聴いたディランのアルバムは“ハリケーン”収録の「欲望」でした。翌年のリリースなんですが、これが我々世代のリアルタイム。中学生でした。御多分に漏れず友だちの兄貴経由だったよね。で2枚目に聴いたのがコレというわけ。こちらはエアチェックだったかな。そこまで入れ込んで聴いたわけじゃないけど…インデックスに自分で書いた邦題が懐かしい。“Tangled up in Blue”は「ブルーにこんがらがって」なんだよ。「運命のひとひねり」「きみは大きな存在」「愚かな風」「おれはさびしくなるよ」「朝に会おう」「リリー、ローズマリーとハートのジャック」「彼女にあったら、よろしくと」「嵐からの隠れ場所」「雨のバケツ」ん~字面が懐かしい。



#1380 / BLONDE ON BLONDE / 1966

★★★★

画像の説明

世界が驚いた!なんと神様がノーベル文学賞を受賞しました。本人と連絡が取れないらしいがまさか受賞拒否なんてしないよね!? 75歳、ワシントン大行進でジョーン・バエズとともに歌った人だからね、マーチン・ルーサー・キングの“I have a dream”ですよ、誰もが認める生ける伝説なわけだ。しかも現役ですから。というわけでこのタイミングでボブ・ディランです。今回はフォークロックにシフトしてから3作目、通算7枚目のスタジオアルバムです。当時としては珍しかった2枚組ですが、ディランの歌がたっぷり聴けて大満足だ。歌詞がわかれば最高だろうな。ディランの最高傑作なんて言われてるね。リアルタイムは「欲望」や「激しい雨」あたりだから、この作品より10年も後ってことになる。カタログが膨大だから80年代以降はこの際置いといて、60年代70年代は聴いておきたいところ。そうなるとベスト盤てことになるわけだが…1枚じゃ無理だよね~。とりあえず曲被りなしで3枚くらい聴いてみましょう。



#2021 / THE BASEMENT TAPES / 1975

★★★★

Bob Dylan the basement tapes

ボブ・ディラン&ザ・バンド(ホークス)のスタジオ・アルバム「地下室」。レコーディング年は古いが、リリースされたのは「血の轍」と「欲望」の間…16枚目のアルバムということになっている。LP2枚組。曲の大部分は67年(8th「JOHN WESLEY HARDING」と同時期)の録音、75年にステレオミックス、オーヴァーダブ。全24曲中8曲はザ・バンドの演奏でディランは不参加と、有名だけど変なアルバムなのね。67年当時、ウソかホントか100曲くらいレコーディングしたとか。そこから厳選されての2枚組なんだけども、ディランのアルバムには収録されず楽曲提供のみという作品もチラホラ。それがヒットするとディランもセルフカバーしたり?”なにもないことが多すぎる/Too Much of Nothing”をPPMがカバー、”怒りの涙/Tears of Rage”や”火の車/This Wheel’s on Fire”をカナダのフォーク・デュオIAN&SYLVIAがカバー、”どこにも行けない/You Ain’t Goin’ Nowhere”と”なにもはなされなかった/Nothing Was Delivered”をTHE BYRDSがカバー、FAIRPORT CONVENTIONは”100万ドルさわぎ/Million Dollar Bash”をカバーしました。ホークスはザ・バンドに改名したデビュー・アルバムに”火の車”と”怒りの涙”を再録音、同じく”アイ・シャル・ビー・リリースト”も再収録されたとさ。ジャケは良い。



#2225 / HIGHWAY 61 REVISITED / 1965

★★★★

Bob Dylan highway 61 revisited

フォークロックに移行して2作目、ニュー・ミュージックの起点となったとされる6thアルバム「追憶のハイウェイ61」です。61号線はディランが生まれた町を通りカナダ国境まで続いていたハイウェイのこと。例の、ロバート・ジョンソンが悪魔に魂を売り渡してギターのテクニックを身につけたという「クロスロード」は、この61号線と49号線が交わる十字路らしい。全米3位、全英4位を獲得しプラチナ・ディスクに認定、2002年にはグラミーの殿堂入りを果たしました。オープニングは永遠の代表曲”Like a Rolling Stone”(全米2位)なので、栄誉を賜らずとも重要なアルバムなのは間違いない。上流階級からの転落を通じて、虚飾に満ちた生き方からの脱却を説く反体制的な歌詞を、それまで娯楽性が強かったロック形式で歌ったことがディランの功績でした。ここからロックは、社会批評性も併せ持つ音楽となり、文化的影響力が一気に向上するのです。バンドのキーパーソンはマイク・ブルームフィールド(G)とアル・クーパー(オルガンとピアノ)。クーパーもギターで参加予定だったが、ブルームフィールドの腕前にビビッて、遊び程度でしか弾いたことがないオルガンを志願したらしい。クーパーを怖気づかせたのは”Tombstone Blues”でのプレイでしょうか。65年にしてはカッコいいギターを弾いているもの。まあ結果的には両者とも今作に貢献(特に”Like a Rolling Stone”)し、歴史に名を残すことになりました。アルバムは11分超えのアコギ曲”Desolation Row/廃墟の街”で終幕。ところで”クイーン・ジェーン”のギターはディランが弾いてるのかな。チューニングが怪しすぎてもやもやする。誰も気にならなかったとは思えないのだが。指摘できない空気感だったとかね(笑) 若い頃から気難しそうだから有り得るかも。



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