DREAM THEATER
DREAM THEATER(US/米)
#78 / IMAGES AND WORDS / 1992
★★★★★★
実はメタル系の新譜を全く聴かない時期がありました。理由はハッキリと思い出せないんだけども、おそらくLPからCDへの移行が原因だったような気がする。β → VHSの時と似た状況だったかもしれない。様子を見ていたというか、CDなるものが本当に定着するのだろうかと疑心暗鬼だったと思われる。同時に参考資料、創刊以来購読していたB誌も買わなくなって(CDレビューのみ立ち読みでさくっと)しまった。もっとも1年にも満たない期間だったと思う。そんなある日、師匠から聴くよう勧められたのがこの2ndアルバムでした。師匠曰く「エラいコトになってる!」と。聴かせてもらうと…なるほどエラいコトになっていた。B誌のレビューをチェックするまでもなく、速攻でCDを買いましたよ。ここまでメタル寄りのプログレハードは斬新だったな。それまでプログレハードといえばRUSH一択でしたが、RUSHには無い新世代のアグレッシブさがあった。目から鱗が落ちるとは正にこのこと。それらを可能にしたハイスペックホルダーたちは、ギターのジョン・ペトルーシ、ドラムのマイク・ポートノイ、ベースのジョン・マイアング、キーボードのケヴィン・ムーア、今作から加わったボーカルのジェームズ・ラブリエです。師匠はペトルーシのフルピッキング高速フレーズにやたら感心しておられましたな。デビュー作から色々あって、3~4年間とにかく練習して腕を磨いたらしい。BOW WOWの合宿エピソードが思い浮かぶ(笑) というわけで、このアルバムがきっかけとなり、途中踏み外してしまったメタル道にめでたく復帰することができたのでした。そして現在に至るまで多少のブレはあるものの、年相応にメタル道を歩き続けているというわけ。この後しばらくの間ドリムシを追いかけてみたわけですが、「メトロポリス・パート2」を除いては、残念ながら今作に比肩する作品は見当たらない気がする。プログレ革命と呼ぶにふさわしい今作の影響で、多くのフォロワーが生まれ、そのレビューに於いてもドリーム・シアター系という表現が当たり前になりました。今作がなかったらUSプログレッシブメタルが盛り上がることもなかったし、当然マグナ・カルタ・レーベルも設立されていなかったでしょうね。さすがにFATES WARNIING他でムーブメントが起こるとは思えないもの。
#185 / METROPOLIS PART2:SCENES FROM A MEMORY / 1999
★★★★★★
デレク・シェリニアンに代わりジョーダン・ルーデスが参加した5thアルバムであり、バンド初のコンセプト・アルバムです。2幕(Act)9場(Scene)で構成されている。インストゥルメンタルは2曲で、ほぼ全編でジェイムズ・ラブリエのヴォーカルが重要な役割を担っています。「悪夢に悩まされる青年の前世を巡る物語」というコンセプトが、見事に表現されている。特にアルバム冒頭の、抑え気味の素直な歌唱と歌メロがPINK FLOYDのような雰囲気を醸しており、一気に引き込まれてしまった。これは凄いアルバムだ、と予感させる素晴らしいオープニング曲です。タイトルから想像できるとおり本作は、名盤2ndアルバム「IMAGES AND WORDS」収録曲“メトロポリス”の続編として製作され、歌詞や旋律が、同曲を下敷きにしたものとなっているってのが最大のポイント。要所要所であの旋律が聴こえてきたら、そりゃあ盛り上がりますわ。冒頭のフロイド風味は第1幕最終場に受け継がれ、女性シンガーが加わります。この伏線が回収されるのは第2幕第8場、フロイドの「狂気」を想起せずにはいられない”The Spirit Carries On”というわけ。女声スキャットの導入は確信犯でしょうね。最初に聴いた時は、これがアルバムのエンディングだと思ったさ。感動のフィナーレにふさわしい。ところが、まだ10分超えの第9場(本当のエンディング)が控えていました。ここがちょっと不満でね、ストーリー上は必要不可欠と解っちゃいるが、楽曲の流れとしてはいかがなものかと。第8場の後に、オープニング同様の短いモノローグで終幕の方が、美しいエンディングだったと思う。ライブではこのコンセプト・アルバムが完全再現されました。アルバム丸ごと完全再現、コンセプト作品をリリースしたバンド間でこの時期流行ってたかも。ジョン・ペトルーシのギターは好きでも、ラブリエの声は正直そうでもなかったりする。ポテンシャルは確かに凄いと思う。が、個性という点では微妙という認識なのね。しかし!このアルバムではそんなことは気にならない。それどころか今作に於けるラブリエは好きです(笑) そしてこのアルバムに関する思い出がひとつ…このCDを聴きながらバーベキュー会場に向かっている時、鬼石町に入ったくらいのタイミングで、桐の花咲く5月3日だというのに雹(ひょう)が降ったんだよ。助手席にはロック好きの同級生T.Tが乗っていました。まあ、彼は覚えていないだろうけど。
#1729 / WHEN DREAM AND DAY UNITE / 1989
★★★★
チャーリー・ドミニシがシンガーを担当した唯一のアルバムです。「Images and Words」前夜の音楽が堪能できるデビュー・アルバムです。3曲目のインストを筆頭に、長尺の曲が並ぶ後半戦に次作の雛形が垣間見える。ペトルーシのフル・ピッキング高速フレーズも聴ける。音質に多少の軟はありますが、他のシュラプネル作品に比べるとマシに聴こえる。ドミニシもシュラプネル系のよくいるタイプのシンガーとは違うし、ラブリエを知らなければ結構な衝撃作だったんじゃなかろうか。と想像するしかないのは、コレを聴いたのが傑作2ndの後だったから。アレを聴く前ならガッツリ喰いついたに違いないだろうなと思われる。アグレッシブなプログレハード路線はバンドの初期でしか聴くことができないからね、シンガーは違えど重要なアルバムではないかと。このあとシンガーがジェームズ・ラブリエに交替して更に強力な布陣に、そして鍛錬に鍛錬を重ねて傑作を創り出すと。
#1939 / LIVE AT THE MARQUEE / 1993
★★★★★
ファーストライブはトータル47分ほど。LP時代ならまだしも、CD企画では短いってことになりますが。「IMAGES AND WORDS」ツアーのライブだからセットリストもそういうこと。惜しむらくは当日の演奏を完全収録していない点。前出アルバムを完全再現しているらしいので誠に残念。”Metropolis PartⅠ”で始まり”Pull Me Under”で締めくくる。中盤に登場するオリジナル・アルバム未収録の”Bombay Vindaloo”が印象的。インド風音階の中、ペトルーシのテクが炸裂するインスト曲。EU盤では”Surrounded”のところが日本盤では”Another Day”に差し替えられている気遣い。さすが分かってらっしゃる。マイアングのベースも、ポートノイのドラムも、スタジオ盤に忠実な素晴らしい演奏です。キーボーはケヴィン・ムーアで、特にオープニング曲でのペトルーシとの絡みは、スタジオ録音同様スリリング。テクニック的にどうなのかは分からないが、後任の鍵盤(デレク・シェリニアン、ジョーダン・ルーデス)よりギターとの相性はいい気がする。驚愕のパフォーマンスにロンドンの人たちもぶっ飛んだでしょうな。曲調は異なれど、Mr.BIGのエリック、ギルバート、シーンの完璧さを思い起こす。個人的にはペトルーシのネオクラ系ギターヒーローとは一味違うギターが好き。そして今作で一番凄いと思ったのはラブリエの力強い歌唱。後のライブでは聴けない荒々しさがある。スクリームもある。と感動したのも束の間、大部分のヴォーカルパートはスタジオで別録りしたものに差し替えられてるんだってさ。