THIN LIZZY
THIN LIZZY(Ireland/愛蘭)
#16 / JAILBREAK / 1976
★★★★★★★
シン・リジィのイチオシは誰が何と言おうとこの6th『脱獄』です。ハードロック史に残る必聴名盤でございます。ご存知の通りGARY MOOREやJOHN SYKESの時代もあるのですが、シン・リジィはやっぱりスコット・ゴーハム&ブライアン・ロバートソンだと思います。やたら音を詰め込むアルバムが多い今だからこそ絶妙なスカスカ感が堪りません。そのスカスカ感に一役買っているブライアン・ダウニーも欠かせません。当時はコピーしにくいという理由で好きになれなかったフィル・リノット(ライノット)のヴォーカル(メロディが不明瞭で語りの延長みたいなところが多々あるので完コピが難しい)も今では大丈夫になりました。いや「聴くのは」って意味でね。コピーは…英語が話せないとかなり面倒な作業になるね。万が一にでも演ることになったら、歌詞をカタカナに直してそれを完コピするでしょう。昔、歌詞カードが無いレコードをコピーした時に使った禁断の裏ワザなんだぜ(笑) オープニングのタイトル曲も名曲だけど…とりあえずTHIN LIZZYの代名詞にして超有名ハードロックアンセム(プロアマ問わず多くのバンドがカバーしているハズ)“The Boys Are Back in Town(ヤツらは町へ)”ですね。あとは“Cowboy Song”と“Emerald”もお気に入り。師匠のイチオシということで高校時代に”Emerald”はコピーしたな。「ヤツらは…」は2度にわたってコピーしましたよ。2度目はライブバージョンでした。
#220 / BLACK ROSE:A ROCK LEGEND / 1979
★★★★★★
78年にリリースされた初のライブ盤「LIVE AND DANGEROUS」を節目として、ブライアン・ロバートソンが脱退(今作にゲスト参加したRAINBOWのジミー・ベインとWILD HORSESを結成)します。そしてゲイリー・ムーアが正式に加入するわけ。再起をかけた9thアルバムは再合流したゲイリー・ムーアに託されました。当然ブライアン・ロバートソンとは違うけれど、コレはコレで文句なしに素晴らしい。ゲイリーとフィル・ライノットの予定調和でアイリッシュ・フレーバー垂れ流し状態になってます。もちろんいい意味でね。曲によっては弾きすぎてしまうゲイリー、さすがにブライアンより音数は多いけれど、要所でスコット・ゴーハムとのツインリードも繰り出されます。プロデュースはトニーヴィスコンティ。オープニングはフィル作の“Do Anything You Want To”、4人でティンパニーを叩くPVが懐かしいです。おまけに4人揃ってギターを弾くという何とも楽しいPVでした。BCリッチ(スルーネック)が流行っていたと思われ、ゲイリーがモッキンバード、スコット・ゴーハムがイーグル、フィルも黒のモッキン・ベース、さらにはドラマーのブライアン・ダウニーまでモッキンバードを弾いていました。このコンビネーションといえば、BOWWOWが使ってたのもこの時期かしら?恭司先輩がイーグルで、光浩先輩がモッキンでしたね。同じくフィル作の“Waiting for an Alibi”(アリバイが英語だと気付いたのはこの曲のおかげだったかも)もハイライト曲。こちらのPVでは2人とも本来のレスポールを弾いてました。もちろんフィルは黒のプレベー。他にも、ヒューイ・ルイスがハーモニカで参加した、カリビアンな雰囲気が漂うフィル&ゲイリー作の“Sarah”、フィルの歌声がやたらと生々しいゴーハム&フィルの”Got to Give It Up”、いかにもTHIN LIZZYなフィル&ミッジ・ユーロ(ゲイリー失踪後のツアーを代役した)の”Get Out of Here”など、素晴らしい楽曲が収録されています。そしてハイライト中のハイライトは、満場一致でエンディングのタイトル曲でしょう。7分を超える、トラディショナル曲のロックアレンジが冴えわたる、フィルとゲイリーの共作曲です。ここに含まれる”Danny Boy”は、ゲイリーの葬儀で、ご子息のジャックによって葬送曲として演奏されたそうです。きっとレスポールだったに違いない。フィルのボーカルとゲイリーのギターが会話しているかのような、アイリッシュ魂が炸裂する感動的な仕上がりです。今作発表後の全米ツアー中、マネジメントに嫌気がさしたとかでゲイリーは失踪。結局ゲイリーが参加したのはこの1枚だけでしたが、前年にはにフィル(ダウニーも)がゲイリーのアルバムに参戦していたし、そもそも前身バンドの盟友でリジィの初期にメンバーだったこともあるし、ブライアン・ロバートソンがケガをした時には代役でQUEENとの全米ツアーに参加もしたし、フィルが亡くなる前年にも”Out in the Fields”で共演したし…とにかく2人は友だちなんですわ。なので2011年に天国で再会しているはずなのさ。
#356 / FIGHTING / 1975
★★★★★
傑作「JAILBREAK/脱獄」の前の5thアルバムだから当然要チェックです。一般的なイメージからすると、LIVEアルバムが好評なリジィという感じになっており、スタジオアルバムだとゲイリー・ムーアとかジョン・サイクスがもてはやされて(ゲイリーは同郷だしね)、まあそれはそれでわからなくはないんだけども、やはり腑に落ちない。フィル・リノット(正しくはライノット)が居ればいいのかよ、と思ってしまう。これもまたわからなくはないんだけど、全盛期を支えたブライアン・ロバートソンをもっと大事にしてほしいわけね。それを言うなら、スコット・ゴーハムとブライアン・ダウニーもだけど。ロバートソンはね、MOTÖRHEADに加入したら加入したでMOTÖRHEADファンからボロクソ言われてさあ、可哀相すぎるでしょ。個人的には「ANOTHER PERFECT DAY/悪魔の化身」好きだけどね。結論から言えば、THIN LIZZYにはロバートソンくらいが丁度いいと思うわけ。ムーアとかサイクスとか、華がありすぎるんだよ(笑) 今作は初の全英アルバムチャート入りを果たしました。シングルカットされたボブ・シーガーのカバー“Rosalie/ロザリー”でスタート。あの声とクセのある歌い回しで何でもオリジナルになっちゃうから凄いね。そのライノットらしさが素晴らしい2曲目”For Those Who Love to Live/愛すべきもの”、ロバートソンとゴーハムのギターバトルが聴ける“Suicide/自殺”、ツインリード・ギターが素晴らしいWild One/帰らぬおまえはワイルド・ワン”(シングルカット曲)、この冒頭4曲の流れがアルバムのハイライト。
#446 / LIVE AND DANGEROUS / 1978
★★★★★★
ベスト盤のみならず、ライブアルバムもたくさんリリースしているレジェンドですが、イチオシは1stライブのコレしかないでしょう。76年ロンドン、77年フィラデルフィアおよびトロントの各公演からのベストテイクが収録されています。黄金期(ブライアン・ロバートソン時代)だから選曲も文句なし。ジョン・サイクス時代のライブも素晴らしいのですが、それはまた別のお話。まずはコレを聴いてからじゃないとね。ロバートソンはこの後脱退してしまうから尚更です。オープニングは“Jailbreak/脱獄”、それに続くのは“Emerald”だもの、出し惜しみなど一切しませんよ。“Rosalie/Cowgirl’s Song”なんてお洒落なメドレーもあったりするし、”Dancing in the Moonlight”や”Still in Love with You/それでも君を”も素晴らしい。そんなハイライトだらけの名演にあって、”Cowboy Song”から”The Boys are Back in Town/ヤツらは町へ”の流れは特に盛り上がる場面ですね。この他にも”Southbound”、”Massacre/虐殺”、”Suicide/自殺”、”Sha La La”など、バラエティに富んだ代表曲が繰り出される。あとはアルバム未収録の2曲と、エンディングのエリック・ベル時代の曲”The Rocker”も収録。当時としては、大満足のアナログ2枚組で、THIN LIZZYの名ライブ盤という評価に留まらず、ロックに於けるオールタイム名作ライブとして認知されているのも当然の内容です。プロデュースはバンド自身とトニー・ヴィスコンティ。ヒューイ・ルイスがハーモニカで参加してたりする。同タイトルのDVDもあるのですが、古いモノは収録曲が少ないので、なるべく新しいモノを探しましょう。
#581 / THUNDER AND LIGHTNING / 1983
★★★★★
ジョン・サイクスのTHIN LIZZYでございます。ミラーピックガードのブラックビューティーだよ。うちにも1本あるけどね(笑) ギブソンでもなければフェルナンデスでもございません。マーク・ボラン風レスポール製作にあたってグレコのデタッチャブル・レスポールを2本購入してネックを交換してね、その時の副産物としてサイクス風に仕上げたものなんですね。詳細は「屋根裏部屋」にてご覧ください。さて、ゲイリー・ムーアは同郷だし元メンバーだしバッチリ波長が合ってたと思いますが、この12thにして最後のスタジオアルバムはどうだろう?フィル・ライノットが歌ってりゃリジィ?…だな!というわけでリジィ史上唯一のヘヴィメタリックなアルバムとなりました。昔からのファンとしては最後がコレかよって思いは当然ありますが、まあコレはコレでやっぱり好きかな。タイトル曲と“夕暮れにて”と“Cold Sweat”(唯一のサイクス作品)で決まりでしょう。
#646 / NIGHT LIFE / 1974
★★★★
“Still in Love with You”で盟友ゲイリー・ムーアがギターソロ参戦した4thアルバムです。この曲はコピーしましたね。トリオで始まったリジィが頭打ちで、ヴァージョンアップの必要を感じたライノットが、一旦はゲイリーを迎え入れた経緯があってのことなのね。結局はブライアン・ロバートソンとスコット・ゴーハムが加入して、ツインギターバンドの地位を確立、そして黄金時代を迎えるわけだから、ゲイリーが定着しなくて結果オーライだったかもしれない。他には“She Knows”や“Sha La La”を収録してます。次の「FIGHTING」さらには名盤「JAILBREAK」に繋がるツインリード体制のプロローグとなるので聴いておきましょうか。
#768 / JOHNNY THE FOX / 1976
★★★★
7th『サギ師ジョニー』です。後にゲイリー・ムーアも取り上げた“甘い言葉に気をつけろ(Don’t Believe a Word)”だけって話もあるんだけど(笑) ロックミュージカルみたいな“サギ師ジョニーとヤクザのジミー”にパーカッションでフィル・コリンズが参加しているらしい。ぶっちゃけ必要性は感じられません。名盤『脱獄(JAILBREAK)』の後だっただけに期待も膨らむってもんだけどね、アイデアはほぼそっちに使っちゃったかな。前作のアウトテイク集みたいなものなのかもしれない。収録時間も短い。それでもフィル・ライノットの語り系ディープヴォイスは健在だしアイリッシュテイスト溢れるギターも聴けるからいいんじゃないすか。“Fools Gold”とか「らしい」曲もあるし。
#1016 / BAD REPUTATION / 1977
★★★★
ブライアン・ロバートソンが抜ける直前の8thアルバム「悪名」です。ロバートソンが弾いてるのはどうやら3曲だけで、他はスコット・ゴーハムのひとりツインギターみたいですね。よって、ジャケもロバートソン抜き。オープニングの“Soldier of Fortune”でいきなりツインリード炸裂なんだけど…実態は一人だったのね。続く“Bad Reputation”もタイトルどおりの雰囲気を纏っていて良い。シングル曲の“Dancing in the Moonlight”はもちろん文句なし。ロバートソン参加曲の“The Woman’s Gonna Break Your Heart”も「らしくて」いいね。なかなかどうしていいアルバムだと思いますけど。ロバートソンはこの次の「LIVE AND DANGEROUS」に参加してから脱退。WILD HORSESを結成して2枚のアルバムを録りました。その後まさかのMOTORHEAD参戦となります。
#1906 / LIFE / 1983
★★★★★
83年フェアウェルツアー、ロンドン・ハマースミスオデオンでの「ラスト・ライヴ」2枚組。ギターはジョン・サイクスとスコット・ゴーハムでキーボーにダーレン・ワートン。オープニングの”Thunder and Lightning”にてサイクス時代のライブだということを宣言。2曲名はゲイリー・ムーア時代の”Waiting for an Alibi”、3曲目は黄金期ロバートソン時代の”Jailbreak”と畳みかける。”Cold Sweat”や”The Sun Goes Down”等サイクス参加アルバムからの曲を主軸に据え、”ヤツらは町へ”や”Emerald”や”Still in Love with You”などの往年の名曲を織り交ぜた素晴らしいライブです。アイリッシュ・メロが炸裂する名作”Black Rose”も忘れちゃいけない…というか個人的にはコレが一番良かったかな。もちろんギターはゲイリー・ムーアだよ。そしてオーラスの”Rocker”にて歴代ギタリストが全員集合。エリック・ベルにゲイリー・ムーア。ブライアン・ロバートソンは”Emerald”にも参加している。スノーウィー・ホワイトは”Renegade”と”Hollywood”と”Killer on the Loose”に客演。なぜか”Rocker”には不参加。ツアー終了後にバンドは解散。そして86年、ヘロインの過剰摂取によりフィル・ライノット逝去。リジィのライブ音源を聴くなら「LIVE AND DANGEROUS」と今作はマストかと。
#2016 / THE PEEL SESSIONS / 1994
★★★★★
72年~77年と、まあまあ長期間に亘る音源からチョイスされた1枚。つまり…エリック・ベル時代とゲイリー・ムーア時代(但し「ブラック・ローズ」時ではなく、エリック失踪後に参加した74年音源)も含むということ。さすがにベル時代は他より若干劣るかな。スタジオセッションだから所謂実況録音盤とは趣きが違うけれど、リジィのいいところである適度な空間(音の隙間ね)、素晴らしいメロ、カリスマ性を堪能できる作品です。フィルのみならず、ロバートソンもゴーハムもロックスターなのだ。スタジオでのガチレコーディングよりも装飾(エフェクト)が省かれ、曲によってはアレンジも異なり、原曲を何度も聴いていればこそ楽しめるセッション。そして何よりベスト選曲。シンプルなレコーディングゆえ曲の良さを再確認できる1枚です。各楽器がハッキリと聞き取れ、コピーするにはもってこいの素材でもある。どうやらPEEL SESSIONS音源は1000近くあるらしい。個人的には60年代から70年代くらいの良く聴いたバンドのCD化を望むところ。特にプログレ、HR、パンクもちょっと懐かしいね。まあ世に出す価値のない下手な演奏もあるでしょうが、さすがにリジィともなるとセッション参加11回で43曲の音源があるらしいよ。「ブラック・ローズ」期あるかな。