CRADLE OF FILTH
CRADLE OF FILTH(UK/英)
#1440 / CRUELTY AND THE BEAST / 1998
★★★★

さすが大英帝国!歴史が証明するように色んなジャンルのオリジネーターであることはもとより、他国勢に先行されたジャンルでさえ、こうやって節目節目で強烈な一撃をくらわしてその存在感を示すのである。というわけで今回は、UK勢としてはCARCASS以来の衝撃とも言える演劇的デスメタルバンドの3rdアルバム「鬼女と野獣」です。ギターとキーボードが荘厳な空気を演出するホラー調コンセプトアルバムですね。テーマはベタな吸血鬼伝説ですが、秀逸なジャケと同等の音楽が詰め込まれております。主人公はドラキュラ伯爵ではなく(笑)16世紀の“血の伯爵夫人“エリザベス・バソリー(バートリ・エルジェーベト)です。彼女の所業について調べてから聴いた方がいい。数々の悪業が語り継がれていますが、一番有名なのはジャケの通り。その他にも、トランシルヴァニア公国やら鋼鉄の処女やらメタルマニア(IRON MAIDENばっかじゃん)にビシビシと響くワードが出てくるので是非検索を。このベタネタを高次元に昇華させたのはヴォーカルのダニ・フィルスだ。金切声という形容がしっくりくる稀有な高音デスヴォイスがとにかく凄いね。高音以外のデス声も出せるみたいだし。どこまでがサラ・イザベル・デーヴァ(女性ヴォーカル)の声なのか不明ではありますが、ダニは間違いなく数種類のデス声を駆使している。デス声でこの表現力…驚異的な一芸だ。他にも何枚か聴いたけど、このアルバムがイチオシです。
#1719 / MIDIAN / 2000
★★★★

エクストリーム・メタルバンドと言われてもイマイチしっくりこないでしょ。カテゴリーに迷う音楽性であることに間違いはないのですが、悪魔思想や吸血鬼伝説を扱っているあたりホラーメタルと呼んでも差し支えなさそうなコンセプト。それにしてもダニ・フィルスは相変わらず凄いですな。デス声なれどデス声にあらず。単純なデス・ヴォイスとは異なる和音の叫び、スクリーム…悪魔の囁きの如し。そう、デス声じゃなく悪魔声だね。突き詰めればホーミー的な。ロック・シンガーだと…男ならデヴィド・リー・ロス、女声ならジャニス・ジョプリンが真っ先に思い浮かぶ独特な唱法。個人的にはエクストリーム・メタル界のデイヴと捉えております。DANI FILTHでしょ、DAVID LEE ROTHでしょ、最初と最後の2文字ずつが共通なんだよ。曲もホラー調を貫いておりキャラクターにブレがない。この調子でオカルト路線を突き詰めていってほしい。時にはクラシカルなプログレとか、もっと大仰なドラマチック・メタルとかの方向性も聴いてみたい。「エクソシスト」のマイク・オールドフィールドとか、「オーメン」のジェリー・ゴールドスミス、「サスペリア」のゴブリン等、先人達からのヒントはたくさんある。ダニのポテンシャルはまだまだこんなものじゃないと思いたい。