カルメン・マキ&OZ
カルメン・マキ&OZ(JPN)
#191 / カルメン・マキ&OZ / 1975
★★★★★
「時には母のない子のように」でデビュー、JANIS JOPLINに感銘を受け、近田春夫と出逢い、竹田和夫のブルース・クリエイションでロックシンガーへ転身したマキ姐さんが、ギターの春日博文と作った1stアルバムです。結成時のメンバーには鳴瀬喜博(後のカシオペア)もいました。同年にリリースされたサディスティック・ミカ・バンドの「黒船」とともに、日本のロックの金字塔と言われているとか。金字塔多いな(笑) バンドの代表曲にしてぶっちぎりの名曲“私は風”(解散後にシングルがリリースされました)を収録しておりますゆえ、個人的にはこれだけで文句無しなんですね。劇的な展開の長尺曲+緩急自在の歌唱=日本のハードロックを代表する奇跡の1曲と呼ばせていただきます。当時はエアチェック音源を何度も聴きましたよ。バンドメイトで同級生のKTに至っては、専門学校時代にコピーしたと言っていました。歌が下手だと目も当てらませんがね。その他”六月の詩”、”朝の風景”、”IMAGE SONG”、”午前1時のスケッチ”(シングルA面)、”きのう酒場で見た女”(シングルB面)を収録。マキ姐さんは、歌唱力はもちろんのこと、ロックシンガー然とした佇まい、カリスマ性においても歴代No.1女性シンガーでしょう。ハーフゆえのエキゾチックな顔立ちはちょっとズルいと思うけど(笑)文句なしにカッコいいんだな。追随できる候補としては、寺田恵子あたりが筆頭でしょうが(実際カバーしてそう)メタルシンガーでありながら歌謡曲っぽいところが微妙だし、川島だりあは歌唱力は充分だけど動き回りすぎ(笑)、中島美嘉やaikoはフィールド違いだし…Superfly辺りが最有力ですかね。ステージ衣装も姐さんを髣髴とさせるものがあるよね。中森明菜がカバーしてるのは聴いたことがあるけど「う~ん…」って感じだった。林明日香はどうした?13歳で歌った“ake-kaze”は凄かった。あのPVでの古代人メイクで、ロックシンガーとして活躍してほしかったな。
#1119 / 閉ざされた町 / 1976
★★★★★
何らかのケミストリーが期待できると言われているLAレコーディングによる2ndアルバムです。遠方まで出掛けた甲斐がありましたね。“私は風”級のインパクトは無いにしても、トータルすれば前作を上回る仕上がりになっておる。イントロダクションで始まりエピローグで終わる(どちらもインスト…というかSE的な小曲)構成、長尺曲なので、プログレフィールドも意識したコンセプトアルバムと捉えていいみたいだ。今回も長めの曲が多いです。春日氏が作るとこうなるのね。盛り癖があるのかな(笑) イントロダクションから続く、文句なしにかっこいい“崩壊の前日”で掴みはオーケー。当時はたしか誰かに借りたカセットテープをダビングした少々劣化した音源を聴いてました。カセットテープあるあるだね。ベースが随所で唸りを上げ主張しているところもまたプログレッシブ。もちろんタイトル曲も好きでしたよ。コレは前作の“私は風”に相当する曲だと思います。ともかくどの曲も“時には母のない子のように”を歌っていたマキ姐さんからは想像もつかない堂々とした歌いっぷり(最後までロック唱法を抑えて歌い切る“振り子のない時計”も素敵)だ。歌詞には相変わらず暗鬱としたムードが漂ってるけど、まあそれがマキ姐さんの魅力の一つですからね。伝えたいことは変わらずとも表現方法が変わったということでしょうか。LAレコーディングの成せる技か“Lost Love”のギターは森園先輩のあの音にそっくりだ。意識したんじゃないすか春日さん。
#1520 / Ⅲ / 1977
★★★★★
語り(朗読)が被さる曲は珍しいよね。瞬間的には森田童子とスコーピオンズくらいしか思い浮かばない。森田童子は曲に語りを乗せ、スコピにいたっては同じセリフをいろんな国の言葉で繰り返すだけ。その点、普通に歌ってる上に語りが被さるパターンはとても斬新です。何のこっちゃ?と興味を持たれましたら、このサードアルバムをお聴きください。OZとしてはラスト・スタジオアルバムです。ハードロック方面からポップフィールドに片足を突っ込んだ作風で序盤戦こそ少々戸惑いますが、聴き進むうちに違和感は吹き飛びます。マキ姐さんの歌唱、春日流長尺曲とギター、いい意味での予定調和です。ダディ竹千代作詞の“26の時”あたりから本領発揮です。“空へ”はイントロからURIAH HEEPみたいな雰囲気で、姐さんもデビッド・バイロンの如し!続く、ロックシンガー転身以前のマキさんが顔を覗かせる“街角”は、“時には母の…”のB面と言われても納得の小曲。そして満を持しての“昔”であります。リアルタイムでエアチェックした曲でもあり、“私は風”タイプの長尺曲でもあり、当時のお気に入りでした。“私は風”に匹敵する、何ならそれ以上の曲構成だと思います。四人囃子にも引けを取らないプログレッシブな展開がかっこいいです。中盤の転調も絶妙。繰り返しますがね、このロックシンガー然とした熱唱を受け継げるのは…
越智志保以外おるまい。
#1940 / LIVE / 1978
★★★★★
「ラスト・ライヴ」77年10月の厚生年金会館解散コンサートおよび同年5月の日比谷野音ライブを収録したOZの実況録音盤2枚組です。全10曲ながらライブ・アレンジにより各曲は長尺になっている。ゆえに、ビシッとキマらない箇所がチラホラあったりしてね。解散ライブ後の12月にレコーディングされる「Ⅲ」のメンバーなのだが、この時点(最後だっつーの)ではまだ一体感が足りない気がする。キーボーの不具合かシンプルに間違えたか、そういう場面もあるし、ギター(春日博文)の露出もイマイチかも。まあ細かい事には目を瞑ろうか。解散コンサートってところに価値があるのだ。オープニングの”君が代”から”午前1時のスケッチ”とか、”崩壊の前日”や”閉ざされた町”、そして”空へ”から”私は風”のエンディング…お気に入りの曲では流石にテンションが上がる。やっぱりマキ姉さんはロック・シンガーだな。時折炸裂する迫力のスクリームが素晴らしい。以前にもどこかで書いた気がするけれど、ぜひともsuperflyさんにはこの路線に踏み込んでほしいんだよね。歌謡路線のハードロック、もしくはプログレハードかな。例えばラナ・レーンとか…まあジャニスでもいいけど。大トリの”私は風”は感動ですぜ。原曲からして長編なのにライブ・バージョンは更に長尺で、ちょっとダラダラした感じもあるのだが、序盤で感極まって歌えなくなっちゃう姉さんが「シビア…」と呟く。陽水の”人生が二度あれば”が頭をよぎる感動の場面でした。