YES
YES(UK/英)
#20 / CLOSE TO THE EDGE / 1972
★★★★★★★★★

YESのイチオシというだけでなく、プログレッシブロックというジャンルの最高峰「危機
」です。「クリムゾンキングの宮殿」と「狂気」とこの5thアルバムがプログレ三種の神器。絶対に避けて通れない3枚ですね。今作は珠玉の3曲構成。いきなり19分弱の組曲“Close to the Edge”です。まあ凄いよ。ハウもスクワイアもやりたい放題の殴り合いが素晴らしい。もちろんキメるところはビシッとキメるから総合的には纏まっているという、全盛期に生み出された奇跡の名演でございます。2曲目は10分強の同じく組曲“同志/And You and I”。この曲で最も惹かれるのはリック・ウェイクマンの様々な音色の鍵盤。エレピ、メロトロン、ハモンドオルガン、ミニモーグ、パイプオルガンを演奏しているらしいけど、どれもこれもがプログレのお手本のような素晴らしい音色だと思う。個人的にプログレというワードからイメージされる鍵盤の音が概ねここにあります。ラストは9分弱の“シベリアン・カートゥル”。いちばんコマーシャルな曲でしょうか。ハウの特徴的なイントロからジョン・アンダーソン節がさく裂します。かなり複雑で何度聴いても新しい発見があるアルバムです。完璧!コピーしようと思ったら大変な作業になることは間違いないね(笑) このマスターピースを産み落とした黄金期のメンバーは…ジョン・アンダーソン(Vo) スティーブ・ハウ(G) クリス・スクワイア(B) リック・ウェイクマン(Key) ビル・ブラッフォード(Ds)というプログレ界のレジェンドにしてジャイアントたち。より良い音で聴きたくて、3枚の「危機」を持ってますが…ここまでの作品となれば最新リマスター盤に更新したくなってしまう。ボートラが追加されたりするし。ちなみに2013年の段階だと…再生可能な環境であればDVD-Audio盤でしょうか。まあ結局は好みなんだけどね。スクワイアのプレイが好だから低音が強調された盤みたいな。ジャケはご覧のようなシンプルさですが一応ロジャー・ディーンです。実はLPの見開き中ジャケに壮大なEDGEが描かれてるというからくり。ではプログレの蘊蓄をひとつ。テクニカルでシンフォニックでクラシカルでユニバーサルなYES。アートでサイケでスピリチュアルでブルージーなPINK FLOYD。トリッキーでスピーディーでパンパカパーンなキーボードロックのEL&P。インプロビゼーション暗黒ヘビー音楽のKING CRIMSON。以上をプログレ四天王と呼ぶんだよ。覚えておいてね♪ これにヴィジュアルも重視した演劇的でファンタジックなGENESIS(もちろんピーガブ時代)を加えると所謂5大バンドとなり、その後生まれたどのプログレもこれら5種類に分類できるとかできないとか…。個人的にはイタリアンプログレ(特にジャズロック的なヤツ)を6番目に加えてもいいと思うのですが、どうでしょう?じゃあ7番目にはファンタジー系プログレのCAMELも加えようか。そしたら女性ヴォーカルも別の括りにして、8番目にクラシカルフォークプログレのRENAISSANCEだな。さらに、忘れちゃいけないカンタベリー系を9番目に。じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ…10番目に…ってな具合にキリがなくなるから「四天王」が便利なんだよって話なのね。
#120 / FRAGILE / 1971
★★★★★★★★

リック・ウェイクマンの加入で黄金期を迎えた4thアルバム「こわれもの」です。「危機/CLOSE TO THE EDGE」が傑作すぎるので、どうしても2番手の位置付けになってしまいますが、今作も間違いなく傑作ですね。「危機」のジャケもこうあってほしかった、というくらいに唆られるアートワークも秀逸です。バンドとしての大作と、メンバーのソロ小品が混在する構成になってますが、全く違和感はないね。それどころか、多彩な小曲群は繋ぎの役割を果たして余りある出来映えだ。特にスティ-ヴ・ハウの”Mood for a Day”はね、前作収録の”Clap”と並ぶ彼の代名詞的なアコギ曲であり、とりあえずコピーしたくなるよね。当時は耳コピしか選択肢がなくて即断念したけど(師匠に頼めばよかったのか)今どきはyoutube等で弾き方を教えてくれるからね、その気になればチャレンジできる。”Clap”よりはハードルが低いし。もちろんバンドの作品は「危機」に収録されていても遜色のないクオリティです。まずオープニングの“Roundabout”が衝撃的でした。クリス・スクワイアのベースラインは歴史に残る名演でしょうね。ビル・ブラッフォードとのコンビネーションは言わずもがな、変拍子がビシビシ決まる。ベースのカッコよさを初めて感じた曲かもしれない。そりゃゲディ・リーもリスペクトしますわな。「ジョジョの奇妙な冒険」のエンディングにも使われましたね。リック・ウェイクマンによる”Cans and Brahms”は、ブラームスの”交響曲第4番ホ短調第3楽章”のキーボードアレンジ曲、ジョン・アンダーソンの多重録音曲”天国への架け橋/We Have Heaven”を挟んでA面を締めくくるのは“南の空/South Side of the Sky”だ。自由に弾きまくるハウのギターが印象的な大作です。そしてB面、ブラッフォードの小曲に続く“遥かなる思い出/Long Distance Rouaround”は不思議なメロのイントロから、アンダーソンが主役と思いきや、結局一筋縄にはいかない複雑な曲で、スクワイアの変拍子曲とメドレー形式になっている。ここで件のアコギインストを挟んで繰り出されるのが、動と静のコントラストが素晴らしい“燃える朝焼け/Heart of the Sunrise”だ。アルバムのエンディングにふさわしいこの大作は、次作の雛形と言えるかもね。曲の前半部にポリリズムを導入した箇所があるらしいけど、聴いていて拍子が追えない部分、要するにノリにくいところが当該箇所ですね。さて、好きなアルバムはデジタル・リマスター盤が出るとついつい買ってしまうけれど、最近ではデジタル・リマスターが施されてなくても、SACDやらSHM-CDやらBLUE-SPECやらDVDオーディオやらキリがない。しかも、中にはそれほどの変化が無い物もあるから困ってしまう。愛用しているBOSEのWAVE MUSIC SYSTEM程度でもハッキリわかる変化がないとね。まあ、たいていの場合ボートラが追加されてるけど…。また同じアルバムを買うの?と多くの人は思うでしょうが、CDにも寿命があるらしいから強ち間違いとは言えないかもよ。 CDより持ち主の寿命が先に尽きそうなのはまた別の問題(笑)
#435 / YESSONGS / 1973
★★★★★★★

全英7位、全米12位を記録した、大満足の初ライブ盤です。72年の「こわれもの」「危機」それぞれのツアー音源ということになるので、YESファンは必聴!当時アナログ3枚組のヴォリュームで発売されました。「危機」の次にリリースされたから、ビル・ブラッフォードの問題(「危機」ツアーの直前に脱退したため「こわれもの」ツアー音源の2曲でしか演奏していない。それでも1曲はドラムソロを含む曲)を除けば黄金時代のライブってことだからね、選曲も含め間違いないわけよ。ただし、スタジオ盤のような緻密さを求めてはいけません。別バージョンとして楽しむべきなのです。仮にコピーするなら、ライブの方が分かり易いしね。やはり「こわれもの」と「危機」収録曲のライブ演奏は感動しかないでしょう。“Siberian Khatru”、“Heart of Sunrise/燃える朝焼け”、“And You and I/同志”、“Mood for a Day”、“Roundabout”、“Close to the Edge”、聴きたい曲が網羅されています。プログレバンドはライブでも上手いんだな~と実感できる1枚でもあります。唯一残念なのは、ほとんどの曲がブラッフォードの演奏ではないこと。もしブラッフォードが叩いていたなら、他のメンバーも更に素晴らしいパフォーマンスを発揮していたに違いないと確信できるからね。2曲を除いては急遽招聘されたアラン・ホワイトが叩いています。ぎこちなく聴こえる場面があるとすれば、申し訳ないがホワイトの責任と言わざるを得ない。そもそもの原因はブラッフォードの脱退なんだけれど、「危機」ツアー後に脱退するという申し出を他のメンバーが却下したという経緯がありました。脱退の理由がKING CRIMSONに参加するためってのが許せなかったのかもね。それでも「LARKS' TONGUES IN ASPIC/太陽と戦慄」「STARLESS AND BIBLE BLACK/暗黒の世界」「RED」という名作を残しているのだから、ブラッフォードの選択は正しかったのかもしれません。ジャケはもちろんロジャー・ディーンですが、ちょっと手抜きかな?
#555 / GOING FOR THE ONE / 1977
★★★★★★

最初に聴いたYESの曲は何だったのか?おそらくラジオで聴いた“Roundabout“だったと思うのだが、よくよく考えると”Siberian Khatru“だったような気もする。いや待てよ、もしかしたら”Wonderous Stories“じゃないか!? というわけで、この”不思議なお話を“という邦題が深く記憶に刻まれているシングル曲(全英7位)を収録した8thアルバム「究極」です。名盤4th「こわれもの」と5th「危機」を創造した黄金期メンバーYESでしたが、まずビル・ブラッフォードが脱退、KING CRIMSONに移籍します。後任はアラン・ホワイト。そして、大作志向が極まった6th「海洋地形学の物語」に不満を感じていたリック・ウェイクマンが脱退、後任としてパトリック・モラーツが加入し7th「リレイヤー」をリリース。フュージョン要素を持ち込んだモラーツでしたが諸事情により脱退。そこで声がかかったのが、ソロ活動中のウェイクマンでした。かくして6thのメンバーに戻って制作された8th、ウェイクマンのパイプオルガンもフィーチャーされ、全英1位/全米8位を記録しました。収録されているのは、タイトルチューン、前出シングル、15分半の大作”Awken/悟りの境地”など全5曲。もちろん「危機」の頃の緊迫感はないわけですが、時代を象徴するポップさを加味したシンフォプログレといった雰囲気の中、”Awaken”で流石の底力を見せている。ブラッフォード抜きのメンバーによる”Close to the Edge”は褒めすぎだが、ウェイクマン効果と言って間違いなかろう。リアルタイムで丸々聴いたYESのアルバムは、リック・ウエイクマンが復帰した今作だったと思う。ただし、レコードを買ったり借りたりしたわけではなく、すべてエアチェック。一つの番組でアルバム丸ごとオンエアした可能性は低いから、複数番組を組み合わせてフルサイズになったと思われます。印象的な傑作ジャケは、ロジャー・ディーンからヒプノシスに交替、心機一転という意味もあったのでしょうが、結局またロジャー・ディーンに戻ったりして(笑) ボートラが7曲(クリス・スクワイアの”Amazing Grace”、”Awaken”のアーリーバージョンなど)収録された2003年リマスター盤がお勧めです。
#664 / THE YES ALBUM / 1971
★★★★★★

ピーター・バンクスが解雇されスティーブ・ハウが加入した「イエス・サード・アルバム」です。この時点でKeyはまだトニー・ケイですがほどなく解雇され、次からリック・ウェイクマンに交代することになります。つまり同年発表の「こわれもの」&翌年の「危機」に繋がる作品ということ。プログレ三大教典のひとつ「危機」の生誕前夜祭的な位置付けだから、聴いておかないといけない作品ですね。全英4位、全米40位に到達しました。リーダートラックの”Yours Is No Disgrace”は、ジョン・アンダーソンのアカペラパート、クリス・スクワイアのジャズパート、ハウのフォークパートなどが合体したイエス名義にして10分弱の大作。新加入メンバー・ハウのお披露目となった”Clap”はライブ音源で、カントリー・ピッキングが冴えわたるアコギインスト。組曲形式の”Starship Trooper”はアンダーソンとスクワイアの曲を繋げ、最後にハウのソロを加えたバンドの代表作です。”I’ve Seen All Good People”もアンダーソン&スクワイアによる二部構成の組曲。レビューするに当たって可能な限りCDを聴き直してみるのですが、最近はイタリアンばかり聴いてたので、その流れで例えばこういうアルバム(本家英国プログレのレジェンド級)を聴くと、やっぱりメジャーなバンドは違うんだなと実感できる。音圧というか、まず出音からして違うもの。まさに王者の風格です。イタリアンの名盤たちを全部リミックス&リマスターしてみたらどうだろう?英国四天王に迫れる作品が1つや2つあるのか?でもね、PFMにしたって世界デビューに際してアレンジし直されたわけだから、そもそも英国プログレとイタリアンプログレを比べてはいけないのでしょうね。イタリアンの魅力はまた別の所にある。
#830 / YES / 1969
★★★★★

すべてはここから始まった。カバー2曲を含む記念すべき「イエス・ファースト・アルバム」だ。スティーブ・ハウとリック・ウェイクマンがいないYESも聴いておきましょう。QUEENやSCORPIONSの1stはこのアルバムからアイデアを得たか?と思わせる部分があったり、ボートラにはまるでNICEな雰囲気の曲も。プログレやハードロック以前の混沌ロックなんだけども…何しろジョン・アンダーソンだし、お得意のコーラスも既に聴けるし、クリス・スクワイアとビル・ブラッフォードのリズム隊も控えめながら片鱗を見せています。3年後にあの「危機」を発表するバンドなわけで、プログレ云々を抜きにすればデビュー作にしてさすがのクオリティーだと思います。そもそも69年ですよ。KING CRIMSONが「宮殿」を発表する3か月前のリリースなのさ。同期なんだね。確かにこの時は「宮殿」に全部持っていかれる形になったけど、それを糧に後に「宮殿」と並び称される「危機」を作っちゃったんだから凄いよね~。69年はロック界大変革の年だった。あと6~7年早く生まれてリアルタイムで体験したかったぞ。他にもLED ZEPPELIN、GENESIS、RENAISSANCEなんかがファーストアルバムをリリースしてる年なんだよ。BEATLESはラス前のアビイ・ロードを発表。伝説のウッドストックもこの年でしたね。
#1020 / TIME AND A WORD / 1970
★★★★★

2nd『時間と言葉』。今回もカバー2曲。アルバムのオープニング曲がいきなりカバーってのはいかがなものかと。オリジナル曲を知らないもんだから曲中に挿入された「大いなる西部」のテーマばかりが耳に残ってしまう。中学、高校時代にFMで映画音楽もエアチェックしてたから、コレは知ってた。有名だよね。まだリード楽器隊はピーター・バンクスとトニー・ケイだから基本的には前作の路線なんだけど、今回の新味はオーケストラの導入。どうやらこれが原因でピーター・バンクスは脱退したらしいです。自分のパートをオケに差し替えられたんだとか…。そりゃ怒るわな(笑) ジョン・アンダーソンの構想を形にするためには力量不足と判断されたんだね。その後おそらく同じ理由でトニー・ケイも脱退。でスティーブ・ハウとリック・ウェイクマンが加入。オーケストラなど必要ないベストメンバーが揃うわけさ。すべては『危機』のため。歴史は語る。
#1101 / RELAYER / 1974
★★★★★

「危機」の後にブラッフォードが脱退してアラン・ホワイト加入。ここでまた黄金期メンバーの1人リック・ウェイクマンが脱退してパトリック・モラーツ(結果的に参加したのは1枚)を迎えて制作された7thアルバムです。A面1曲B面2曲という構成はあの傑作「危機」を踏襲するものとなりました。前作の2枚組は長尺4曲でさすがにやりすぎたよね。個人プレイの応酬ってな感じでアレは飽きるわ。曲が練れてなかった。やっぱりこれくらいの塩梅でしょうね。まあ何にしても「危機」と比べちゃダメだけど。モラーツ効果としてはジャズフィーリングの導入(“Sound Chaser”のイントロとか)ということなんだけど、それはさておきスリリングでハードな印象のアルバムです。スティーブ・ハウの長いソロパートも割と歪ませた音で弾いてるし。もちろん各パートのテクニックは申し分なし。新加入のモラーツも凄い。でもね、色々不満はあるわけ。ジョン・アンダーソンのメロディはイマイチだし、曲もファンタジーに欠けるというか、自由度が後退したというか、結局「危機」と比べちゃってるんだね(笑) 凄いのを作っちゃうと後が大変なのさ。 ロジャー・ディーンのジャケは美しいです。※YESの肝は縦横無尽に駆け回るクリス・スクワイアのベースだと思う。自由にやってるけど実はまとめ役みたいな。特に初期の作品を聴くと、ゲディ・リーはスクワイアをリスペクトしてるんだろーなと思える。2人ともリッケンバッカーのバキバキモードだしね。
#1320 / TALES FROM TOPOGRAPHIC OCEAN / 1973
★★★★★

大作志向ここに極まれり!20分前後の曲を4曲収録した6thアルバム「海洋地形学の物語」でございます。2枚組です。やりすぎたね(笑) 凡百のプログレバンドとの格の違いは確かだから2曲くらいは「これぞYES」ってな感じで楽しめるんだけども…だんだんキツくなってくる。「危機」を4つ揃えろとは言わないが、このヴォリュームに対してのアイデア不足は否めません。JETHRO TULLのように1枚に纏めるべきだった。コンセプトは同一路線でも密度は段違い。“Close to the Edge”1曲を4曲(「神の啓示」「追憶」「古代文明」「儀式」)に薄めた感じとも言えるかな。まあそれくらい「危機」は凄かったということで決着だね。ドラマーがブラッフォードからプログレと無縁のアラン・ホワイトにスイッチしたためか全体的にまったりした仕上がりだ。文字通り“危機感”がない(笑) リック・ウェイクマンはこれを最後に脱退となりました。リックは作品への不満からレコーディングを完遂しておらず一部はアランが弾いているそうです。かくして全盛期のYESはごく短い期間で終了となりました。
#1789 / TORMATO / 1978
★★★★★

アルバム・タイトルは、岩山の名所(yes tor)の写真から潰れたトマト(tomato)を連想して生まれた造語という9thスタジオアルバムです。。ジャケは全くその通りの仕上がりで、前作に続きヒプノシスの作品と思われます。メンバーは「究極」と同じ、アンダーソン、ハウ、スクワイア、ウェイクマンにアラン・ホワイトという布陣。シングルカットされた”クジラに愛を”だけは当時エアチェックして聴いた記憶がある。後に縁あってレコードを入手。85~87年頃御用達だったレンタルレコード店「友&愛」では時折レンタルアップ商品を廉価販売(500円前後だったかな)しており、その時に買いました。YESのレコードはコレとベスト「CLASSIC YES」(おそらく購入経路は同じ)しか持ってないという巡りあわせ。さて肝心の内容ですが…とにかくコンパクトな作品(”自由の解放”と”自由の翼”はいい)でまとめられています。そこが微妙でね。長尺ばかりがプログレじゃないけれど、「危機」信奉者としてはちょっと食い足りなさは否めない。この後、再度リック・ウェイクマンが、そして遂にジョン・アンダーソンまでもが脱退するわけで、全盛期のYESらしさが残る最後の作品と言えるかもしれません。80年から90年代にかけての作品もいくつか聴いてみましたが、刺激は徐々に後退しており、プログレとは言い難い普通の美しいシンフォ・ロックでした。ただし例外として「ロンリー・ハート」は聴くべきかと。売れたのには訳があるってこと。
#2000 / UNION / 1991
★★★★

まだまだ続くYESストーリー。というわけで、前回紹介した「TORMATO」から今作に至るまでの経緯から。まずジョン・アンダーソンとリック・ウェイクマンが脱退。代わりにBUGGLES(トレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズ)が加入し「DRAMA」を80年に発表。その後ちょっとしたすれ違いが生じ…スティーヴ・ハウとダウンズはASIAを結成。クリス・スクワイアとアラン・ホワイトは、トレヴァー・ラビンと合流、そこに旧メンバーのトニー・ケイ、さらにはアンダーソンも加わって83年「90125/ロンリー・ハート」をリリースして爆売れ。87年には同メンバーで「BIG GENERATOR」を発表。88年アンダーソンは再び脱退してハウ、ビル・ブラッフォード、ウエイクマンと合流してABWHを結成。黄金期の残りワンピース、スクワイアの代役は、KING CRIMSONのトニー・レヴィン。89年に「閃光」発表。続く2ndの曲をラヴィンに依頼したのをきっかけに、なんとスクワイア&ラヴィンの90125イエス(+ホワイト、ケイ)とABWHが合体。かくして今作「UNION/結晶」のリリースとなるわけです。ABWHの曲に90125の4曲が混在。メンバーは上記8名にレヴィンやビリー・シャーウッドを始めとする大勢のゲストたち。こうなると「結晶」というより「組合」でしょ。ファンが待ち望んだ形ではないけれど、ある種のお祭り騒ぎに世界中が盛り上がったとさ。肝心の音の方はですね、コンパクトな楽曲の中、アンダーソンの歌が中心になっている印象で、往年のYESとレヴィン主導のYESの中間路線であるのは当然至極。黄金時代のスリリングさはなくなり、近代的かつ年相応のプログレに留まっている。