WINGS
WINGS(UK/英)
#228 / WINGS GREATEST / 1978
★★★★★★

ご存知ポール・マッカートニーが、ビートルズ解散後に結成したバンド唯一のベスト盤です。71年~78年にリリースされた6枚のアルバムから12曲がチョイスされている。ビートルズと比べたらそんなに知らないよねと思いきやですよ、意外と耳にした曲が多いのではないでしょうか。そりゃあそうさ、あのポールが作曲してるわけだから。一度聴けば耳に残る。もちろん好きなアルバムはありますが、好きな楽曲が分散されているのも事実なわけで、イチオシアルバムを何にしたらいいか実に悩ましいバンドなのね。”Band on the Run”と“Jet”を収録した「BAND ON THE RUN('73)」は当然捨て難く…① ジャケが最も印象的だったのは「VENUS AND MARS(’75)」だったけど…② 結局一番の想い出は“Silly Love Song/心のラヴ・ソング('76)”だったりするし、だったら”Let ‘em in/幸せのノック”も収録されている「SPEED OF SOUND」か…③ gutsあたりの音楽雑誌にスコアが載っていた“Mull of Kintyre/夢の旅人('77)”はアルバム未収録、バグパイプの響きが新鮮で、スコットランドのキンタイア岬が思い浮かぶフォーキーな名曲。しかもフォークギターを弾き始めた頃の忘れ難い曲だから外せない…④ ”With a Little Luck/しあわせの予感”は好きだけど収録元の「LONDON TOWN」に馴染みはない…⑤ この散漫な記憶の数々を1枚で解決してくれるとなればもうコレしかあるまい。というわけで①③④より今回はこのベスト盤をオススメします。そういえばLPを持っている唯一のWINGSでした。
#354 / WINGS AT THE SPEED OF SOUND / 1976
★★★★

想い出のSONY120分テープに録ってあった“Silly Love Song/心のラブソング”(全英2位、全米1位)が収録されてるという理由で買った5thアルバムです。アルバム自体も全英2位、全米1位を獲得しました。お目当ての曲はベスト盤や各種コンピにも入っているので、オリジナルアルバムはスルーしてきたんだけどね、76年の空気感に魅かれてというか、好きな曲が入ってるんだからアルバム全体を聴いておこうかと思っちゃったんだね。当該曲と“Let ‘em In/幸せのノック”はポール節炸裂で文句なし。ベースプレイもいい。そして、アルバムの要所に確実に秀逸な楽曲を配しているのは流石です。しかしどうだろう!? ポール以外のメンバーによるリードヴォーカル曲を半数近く(5/11)入れちゃうというのは、それを望んでいるファンがいるのかい?リンダはまあ許すとして(声が低いから注意していないと彼女とは気付かない)他の人のヴォーカル曲は要らないと思う。よりバンドらしさを出すためとのことだが、やりすぎましたね。そういう意味で微妙なアルバムだ。ウチにあるのは再発盤で、ボートラとしてポールのお父さんがらみのカントリー曲と、シングルB面の“Sally G”(これもカントリー調)を追加収録。アメリカンスタイルの楽曲は父親の影響だったんですな。
#579 / BAND ON THE RUN / 1973
★★★★ ★

稀代のメロディ・メイカーのセカンド・ステージ、ビートルズのポール・マッカートニー率いるウイングスの、全英/全米1位に輝いた大ヒット3rdアルバムです。ビートルズ解散後の作品中最も売れたアルバムとなっている。ナイジェリアでのレコーディングを選択した結果、度重なるアクシデントに見舞われ、難産だったとのこと。そもそもナイジェリアに向う直前にメンバー2名が脱退してしまった。よって基本的にはポール、リンダ・マッカートニー、デニー・レインの3名でレコーディングされており、特にポールはドラムまで叩いている。にしては総じて出来は良く、さすがポールとしか言いようがない。とにかくオープニングのタイトルチューンが素晴らしいです。3曲分のアイデアが盛り込まれたような、冒頭から刻々と、惜しげもなく曲調を変化させる様は、かつてビートルズでレノンとマッカートニーのアイデアを繋ぎ合わせた名曲が思い出されます。イントロからわくわくが止まらない名曲だね。帰国後にジョージ・マーティンのスタジオで残りの曲(”Jet”など)をレコーディング、ハウイー・ケイシーのサックス、トニー・ヴィスコンティ(編曲)の指揮による管弦楽団の演奏がオーバーダビング、ミキシングされ、アルバムは完成しました。後期ビートルズで実践されていた手法ゆえ、ジョージ・マーティンの助言もあったのでしょうね。アートワークはヒプノシス(ストーム・トーガソン)。「バンドが逃亡中」というコンセプトで、WINGSメンバーの他、数々の有名人が演じているのですが、その中にはジェームズ・コバーン、クリストファー・リーという2名の大御所俳優が含まれています。”Band on the Run”と”Jet”は文句なし。あとは”Mrs.Vandebilt”や”Mamunia”がアルバムをカラフルに彩る。残りの曲も総じてよく出来ており、さすが大ヒットアルバムといったところ。今作は、ビートルズと一緒に幼馴染のH.A.に録ってもらったか、エアチェックしたか、冒頭2曲“Band on the Run”と“Jet”ばかりを聴いてたね。タイトル曲の方は戦争映画で使われてたのが印象的でした。調べてみたらどうやら「キリング・フィールド」の挿入歌だったらしい。ベトナム戦争の映画だと思っていたのに、勘違いか!?「四方を壁に囲まれて永遠にここから出られない。もう誰にも会えない」という歌詞が、人生の様々な場面に当てはまってしまうのでしょう。そのまんま「バンド・オン・ザ・ラン」という映画もあるみたいだよ。
#888 / VENUS AND MARS / 1975
★★★★★★ ★

カセットテープ時代(レコードは持ってなかった)から今に至るまで何回聴いたことだろうか?ってくらいよく聴いたアルバム。ちょっと前にラフ・ミックスと銘打ったCDを購入した際にも比較するためにオリジナルを確認したしね。結局そのラフ・ミックス盤は微妙で…オリジナル盤の偉大さを再確認するために買ったようなものでした。ビートルズ関連ということは中学時代にヒロヤン経由で入手した可能性が高い。エアチェックが先で後に録ってもらったパターンでしょうね。一般的にもヒプノシスのジャケも有名な名盤とされています。“Rock Show”なんかが入ってるわけですが、何度も聴いてるせいで、どれもこれもお気に入り。バラエティに富んだ楽曲の中でポール節が炸裂してます!バンド・オン・ザ・ランの元気なノリも心のラブソングのお洒落な雰囲気も好きだけど…トータルするとコレがWINGSの最高傑作だと思う。ヒプノシスのジャケもシンプルで美しい。赤いのがヴィーナス(愛と美の女神)で大きいのがマーズ(戦の神)だろうね。二人は恋人同士なんだよ。ちなみにその子供がエロス(キューピッド)なのだ。