Stop thinking you can't do things and start thinking you can. Your future is whatever you make it, so make it a good one.

NEW TROLLS

NEW TROLLS(Italy/伊)

#28 / CONCERTO GROSSO PER 1 / 1971

★★★★★

New Trolls concerto grosso per1

イタリアンプログレには悲しみが満ちている…というのはあくまでも一面に過ぎず、実際には多種多様でありまして、突き詰めていくとキリがなくなる。まあ何でもそうだけど、音楽くらいは肩肘張らずに聴きたいね。そんなわけで、イタリアンプログレはなかなかに深淵です。要チェックなグループの数は本場イギリス以上かも。アルバム1枚で解散してしまったグループの作品が名盤だったりするからさ、所謂「当たり」が多いだけに一度ハマると財政難に陥ってしまう。察するに日本人の琴線に触れる旋律が多々ある結果だと思われます。イギリスをひととおり聴いたら次は迷うことなくイタリアへ向かいましょう。ドイツやフランスは後回しでよし。いろいろ聴いてるうちに既成のカテゴリーに納得できない部分がでてくるから面白いんだよね。最後は自分の耳で聴いて自分の感覚で分類するしかないって事を理解する。プログレ本のレヴューはもちろん参考になるけれど、同時に頼り過ぎは禁物だってこともわかる。本レヴューも同様、あくまでも個人の感想なので参考程度に留めて頂きたい。というわけで…メジャーどころのPFMが琴線に触れたら次は是非こちらの作品をどうぞ。クラッシック(オーケストラ)とロックの融合アルバムとして傑作と言われている3rdアルバムです。マカロニウエスタンを出自とする、フェリーニ作品も担当したイタリア映画音楽界の重鎮(なのか?)ルイス・エンリケ・バカロフがアレンジと指揮を担当。アメリカ映画音楽界の重鎮ラロ・シフリンとはいとこ同士らしいです。ともに出身はアルゼンチンなのね。♪…to die, to sleep, maybe to dream…♪16歳の記憶が鮮やかによみがえる歌詞なんだな。FMのプログレ特集で初めて聴いた曲。音楽における究極の美の1つが聴ける傑作でしょう。約20分のラス曲だけ、オケ抜きのバンド編成曲ですが、コレがこのグループの特徴であり魅力なんですね。理由はいたってシンプル。クラシック志向のヴィットリオ・デ・スカルツィと、ハードロック志向のニコ・ディ・パロという2人のギタリストにしてリーダーが存在するからなのね~。



#295 / UT / 1972

★★★★★

New Trolls UT

「CONCERTO GROSSO PER1」はクラシック+ロックの名作でしたが、この5thはクラシック+ハードロックの名作となりました。どのみち名作と評されるのがこのグループの偉大なところですね。プログレ・ハードとチョイと違うのは、いい意味で雑多な点。「アイデアを詰め込み過ぎて散漫な感じ」という否定的な表現もあるけれど、個人的にはこう評価されたアルバムを気に入る確率が高かったりする。いくら高邁なコンセプトを掲げて、アルバム1枚でその世界観を表現したとしても、退屈な場面が続いたりするとね(跳躍する前のタメの大事さもわかっちゃいるが)、聴いてて終始面白いと思える作品の方がお得じゃないかと。根っからの貧乏性なもので。「おもちゃ箱をひっくり返したような」という、好意的に使われる意見と紙一重なんだね。聴き手によってその境界線に差があるってことなのさ。良くも悪くも「コンチェルト・グロッソ」とファンの人気を二分する作品。個人的にはグロッソ派ですが、72年にこれだけのことをやっていた事実には驚くしかない。ヴィットリオ・デ・スカルツィ(ギター)とニコ・ディ・パロ(ギター/ボーカル)という2人のリーダーがいたことによって、こういうアルバムになったようです。おかげで、マウリツィオ・サルヴィの荘厳な鍵盤、キース・エマーソン的キーボー・ロックやフォークロック、バラードそしてハードロックと多種多様な楽曲が楽しめる。UK勢は別格として、イタリアンプログレもやっぱ凄いと思わせてくれる作品。たとえ従来作品のようなコンセプトは無くとも。イタリアンプログレの入門編として強くお勧めします。果たして今回曲作りに参加しなかったヴィットリオ・デ・スカルツィとの確執が表面化、パロ他数名がバンドを去るという結末を迎えます。が、案ずることなかれ。「コンチェルト・グロッソN2」で再集結しますので。



#653 / CONCERTO GROSSO N° 2 / 1976

★★★★

New Trolls concerto grosso n2 (320x320)

2人のギタリストにしてリーダー的存在が方向性の違いから分裂し、まあそのおかげでスカルツィは「ATOMIC SYSTEM」を、パロはIBISで「SUN SUPREME」を生み出すわけだから必然だったのかもしれないが、だったらこの再結成も必然でしょ、めでたく再結成してリリースしたのは、クラシックとロックが融合した名作「コンチェルト・グロッソ」の続編ということに落ち着いた。プログレバンドとしての原点回帰をそこに定めたということなのね。第1弾に引き続き、ルイス・エンリケ・バカロフがストリングスを指揮。メンバーはPER1時の4名に新ギタリストを加えた布陣ですが、何故にギタリスト!ギターが3人になっちゃいましたけど(笑) さすがに雰囲気はずいぶん違っちゃったね。たかだか5年の間に時代が変わってしまった。ディスコやパンクが流行り出す頃。それでも続編を謳うだけのことはあるわけで、あの哀愁のメロディが散見できるのはうれしい。冒頭のもったいぶった演出がいいね。前作のあの音がちらちらと聴こえるだけでワクワクする。パロのハイトーンやコーラスワーク(QUEENは褒めすぎ。せいぜいURIAH HEEPの”肉食鳥”止まり)も健在です。要は、かの名作を76年当時の新解釈で練り直したってことなのかな。「チューブラーベルズ」の続編に似た感触です。終盤ゴスペルっぽい曲も飛び出してアメリカの匂いがします。油断してると何を聴いてるのか忘れちゃうほど。最後はビシッと決めてるとはいえN°1を再び、などと期待するとちょっと違うと。ここは素直に仲直りを喜ぶべきかと。



#1067 / ATOMIC SYSTEM / 1973

★★★★★

New Trolls atomick system (320x320)

オリジナルメンバーはスカルツィしかいませんが、これもトロルスの代表作になりました。プログレ度は極めて高く、70年代プログレの代表作といっても過言ではない出来。ヴィットリオ・デ・スカルツィが底力を見せた1枚なんですね。パロとの決別後、結局スカルツィだけが残り、メンバーは一新されています。ポイントは、キース・エマーソンをリスペクトしてます的な新キーボーを筆頭に、メンバーのうち3名が鍵盤でクレジットされていること。多彩なキーボード(オルガン、シンセ、メロトロン、ムーグ等)を主軸にサックスやフルートも織り交ぜつつ、がっつりプログレしてるのがいい。楽曲の方は、ジャズパート(次作ライブで全開)あり、イタリアンな歌あり、女声ヴォーカルパートもあり、キレッキレの変拍子やEL&P流の元気なハードロック感、総じてヘヴィなサウンドを纏いながらどこを切ってもプログレ度が高くて、万人にお勧めできるユーロ・プログレ作品です。スカルツィの意地が強力なメンバーを引き寄せたってことかな。そういう意味ではメンバーを一新したことで生まれた奇跡の1枚とも言えますね。旧メンバーでは成し得なかったプログレでしょう。最後を英詞のフォークロックで締めくくるあたりに、本場英国プログレへの憧れを感じます。



#1391 / SEARCHING FOR A LAND / 1972

★★★★

New Trolls searching for a land (320x320)

アナログ2枚組でリリースされた4thアルバム「見知らぬ桃源郷の探索」です。名作「コンチェルトグロッソ」の次の作品ということになるわけですが…奇跡はそうそう続かないわけだ。ヴィットリオ・デ・スカルツィ主導のフォーク調プログレなスタジオ録音とニコ・ディ・パロ主導のハードロック調なライブ録音が1枚ずつという変則盤です。録音の違いは抜きにしても全く別のバンドのよう。分裂の兆しはこの時点であったんだね。次作「UT」を発表後バンドはNEW TROLLS ATOMIC SYSTEMとIBISに分裂します。スタジオ録音はアコースティック系の楽器が幅をきかせる内容。エレキギターが入った曲はハードですが全体的にはフォーキーな趣が支配的。好きだけどね。ライブ録音の方はジャジーな導入から徐々にハードロックテイストが強くなる印象。サイケロックと言っても良さそうだ。JETHRO TULLの如きフルートが入ってもハードロックに変わりなし。ニコのハイトーンヴォイス強力だからハードな曲を演りたくなる気持ちもわかる。ドラマーの中性的なヴォーカルもいい味出してる。



#1767 / TEMPI DISPARI / 1974

★★★★

New Trolls tempi dispari

分裂のゴタゴタにより、前作「NT ATOMIC SYSTEM」同様バンド名が使用できなかったため、NEW TROLLS ATOMIC SYSTEMという名義でリリースされたライブ盤です。メンバーは基本的に同じ。大まかに言うなら15分超2曲のみのインプロジャズロックという構成なので飽きるといえば飽きるかも。まあそこは聞き手の努力次第ではないかと。即興音楽とはいえそこは流石にプログレ畑、サイケ時代の酩酊ロックよりは遥かに起伏に富んでいて、バンドのポテンシャルがよく分かる演奏が聴けます。ライブゆえ鍵盤は前作でも大活躍だったレナート・ロッセが一人で担当。アルバム・タイトルは「奇数拍子」という意味らしく、ジャケにも奇数が描かれている。当然収録2曲も奇数変拍子というわけ。1曲目の”7/4”は1234/123という感じの拍子。ベースのリフにギター、ピアノ、サックスが絡んでくる形ですが、ギターの歪み具合がいいね。サックス+ハードなギターはKING CRIMSON的な瞬間をもたらします。2曲目”13/8”は123/123/123/123/1かな。イントロが長くてちょっと眠くなってきたところに、いきなり”コンチェルト・グロッソ”のテーマが聴こえてきて目が覚める(笑) そこからまたジャズロックならではの分かりにくい拍子のベース・リフに、オルガン、サックス、ギターがやりたい放題と。凄いと思うけどね、スタジオ作品とは全く違うのでご注意を。



#1920 / L.I.V.E.N.T. / 1979

★★★★

New Trolls L

73年に分裂、そして再集結して「コンチェルト・グロッソ2」をリリース。その76年頃の音源らしい。音質の問題からお蔵入りになっていたものゆえ、名作ライブ「テンピ・ディスパリ」に比べるとブートレグ感は否めませんが、ちょっとマニアックな「テンピ…」より万人受けするであろう内容。歌モノ”秘密~私はアイリッシュで始まったのには少々面食らいましたが、続く”鉱山”は同じ系統でも歌唱の素晴らしさに圧倒される。そしていよいよプログレバンドの真骨頂”ディスコ組曲”のスリリングな演奏でガッツリ引き込まれます。アレンジが秀逸な有名曲”禿山の一夜”を挟んで、いよいよ目玉となる”コンチェルト・グロッソN1とN2”が登場。オケではなく鍵盤やギターで代用されているが、そこはライブゆえあまり気にならず。続く”太陽王”も素晴らしい。コーラスワークはバッチリですな。声にハリがあるもの。ニコ・ディ・パロのギターも荒くれ具合がいいね。多少の間違いも何のその、細かいことは気にしないのも若さゆえ。アルバム終盤に繰り出されるのはゴスペル調の”Let it be me”、締めくくりのヴォーカル曲”20才”。ダイジェスト的な内容で食い足りなさはあるが、貴重かつよくできた構成ですな。ちなみに、後に購入したDVD「2007コンチェルト・グロッソ~トリロジー・ライヴ」は皆オッサンになってからの演奏なれど、コレはコレで文句の付けようのない素晴らしさ。タイトル通りグロッソ1~3完全再現のグロッソまみれ(笑)



#2244 / CONCERTO GROSSO LIVE / 2001

★★★★★

New Trolls concerto grosso live

オーケストラとの共演で、名盤「CONCERTO GROSSO」Part1と2 のフル演奏を含む、素晴らしいライブアルバムです。スタジオ録音と比べても遜色のない演奏で、30年前の作品をこのクオリティで再現できるのは素晴らしい。何かしらの衰えはあるはずなのに、それを感じさせないのは、次世代ミュージシャンたちの力を借りていること以上に、プログレというジャンルゆえではないかと思う。ゴリゴリのヘヴィメタだと痛々しいことになりそうでしょ(笑) 唯一の弱点と言えそうなのは、今作はヴィットリオ・デ・スカルツィ名義、つまり盟友ニコ・ディ・パロが参加していないこと。時は流れ、2007年デ・スカルツィとディ・パロが再び合流します。そして登場するのがDVD作品である 「TRILOGY LIVE」なんですね。オリジナル・メンバーは、白髪のヴィットリオ・スカルツィ(指揮者の如し)と、ロン毛後ろ縛りのニコ・ディ・パロ(ギターは弾けず鍵盤での参加だがコーラスの高音パートは重要)だけですが、中心人物2人が揃ったところに意味がある。少し若い世代と思しきその他のメンバーも、禿げが2人(ギター、ドラム)に、坊主頭(ベース)だったりしますが、演奏もコーラスワークも全く問題なし。もちろんオーケストラとの共演で、しかもおなか一杯になる収録時間と、プロフェッショナルかくあるべしという作品。ファンの皆様もそれなりの年齢層で会場の暖かさも感じられる。野外で夜ですけど。同世代の皆さま、ぜひ両作品を鑑賞して30年の時の流れに思いを馳せましょう。これ以外にも「CONCERTO GROSSO」関連のライブがたくさん出ているのですが、個人的にはこの2作で満足です。ヴィットリオ・デ・スカルツィは2022年、72歳で死去しました。



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