ARCH ENEMY
ARCH ENEMY(Sweden/瑞典)
#626 / WAGES OF SIN / 2001
★★★★★

CARCASSを脱退したマイケル・アモットがUKから帰国、SPIRITUAL BEGGARSの活動から少し遅れ、弟クリストファー及びヨハン・リーヴァ(Vo)と結成したメロデスバンドです。当初は弟を世に出すためのサイドプロジェクトだったのかな。ダニエル・アーランドソン正式加入(1stでゲスト参加、レコーディング中にピーター・ウイルドアーが脱退した2ndでは2曲担当)後の3rdアルバムでも良かったのですが、衝撃の今作が出ちゃったからね、イチオシはコレにしておきます。ヨハン・リーヴァから、ドイツ人デスメタルシンガーのアンジェラ・ゴソウにスイッチした初のアルバムです。苦手のデス声も女性が吠えてると思えば単純に「凄ぇ!!」だけで聴ける。声帯が心配になるくらい凄いです。この男声にしか聞こえない女声(ヴィジュアルも良い)は当然注目点ですが、全体としてはやはりアモット兄弟のギターが聴きどころなのは変わらず。アグレッシブなリフ、各々のソロ、ツインギターのハーモニー、シェンカー兄弟の次世代版と言ってもいいでしょう。メロデスのデスサイドはアンジェラが、メロサイドはアモット兄弟が、それぞれ高度な次元で担っております。ベースのシャーリー・ダンジェロ(元MERCYFUL FATE)は言わずもがな。映像で見る面構えはもちろんのこと、立ち居振る舞いが申し分なくかっこよく存在感抜群、ベースを弾かずそこに立っているだけでも成立しそう。このメンツが揃ったアチエネをメロデスの最高峰の一つとしたい。魅力が凝縮したファストチューン”Enemy Within”、タイトルはBLACK SABBATH?音像はUFOのインスト”Snow Bound”が特に良かった。その後シンガーがアンジェラ(マネージャー業に転職)からアリッサ・ホワイト=グラズ(これがまた凄い)へ、ギターはクリスからジェフ・ルーミス(NEVERMORE)にそれぞれ交代しました。
#1447 / BURNING BRIDGES / 1999
★★★★

このバンドのいいところはギター主導の楽曲に他ならない。基本的にデスが苦手でも聴ける最大のポイントだ。今作はヨハン・リーヴァ在籍最終作にして3rdアルバムです。ベーシストがシャーリー・ダンジェロに交替…つまりヴォーカルを除いて最強の布陣となりました。アモット兄弟のプレイが素晴らしいです。マイケル・シェンカー(にはもちろん及びませんが)の如き泣きのフレーズがビシビシ繰り出されるゆえ、デス声など些末なことに感じてしまう。2本のギターが歌って、デス声がリフを刻んでいるように聴こえるもの(笑) 次作でヴォーカルがアンジェラ・ゴソウに替わって世界的に認知されるんだけども、曲の出来はこっちの方がいい。だからといってそれがヨハンの功績ってわけじゃないけどね。プロデュースはスウェーデンの重鎮、DREAM EVILのフレドリック・ノルドストローム。名立たるバンドを手掛けており、その中にOPETHも含まれている経緯から?ペル・ヴィバリもメロトロン他でプチ参加。
#1703 / ANTHEMS OF REBELLION / 2003
★★★★

アンジェラ・ゴソウが加入して2作目、通算5枚目のアルバムです。巷間言われている通り、それが良いか悪いかは別として、シンプルな曲構成がウリのアルバムだね。こうなるとメロデスの範疇で語るべきか否か、アンジェラの咆哮以外にそうした要素はほぼ無いように思う。シンプル・リフに短めのソロ、これまでと比べると確かに喰い足りなさはある。それでもね、オープニング曲からして凡百との格の違いは明白なわけですよ。音質とかもあるんでしょうが、出だしから単純にかっこいいもの。プロデュースはこれまでのフレデリック・ノルドストロームからアンディ・スニープ(前作でもミキシング)に交替しています。メンバーは変わらず最強の布陣。アモット兄弟にシャーリー・ダンジェロ、ダニエル・エルランドソン、ペル・ヴィベリ…この面子が揃っているのだから、メロデスであろうがなかろうが、貴重な過渡期の作品だと思って聴いてみるのがよろしいのではないかと。クリストファーのクリーン・ヴォイスも聴けるしね。
#1877 / BLACK EARTH / 1996
★★★★

CARCASSにメロを持ち込んだ功労者(戦犯?)が凱旋帰国後、SPIRITUAL BEGGARSに続いて盟友のヨハン・リーヴァと、クリストファー、そしてダニエル・アーランドソンと共に始動させたバンドのデビューアルバムです。ベースは不在でマイケルが担当。もはや四半世紀前の作品とは驚き。印象としては「HEARTWORK」由来の静のパートも盛り込んだデスラッシュ寄りのメロデス。2ndほど明瞭に聴こえないヴォーカルも逆に吉。エンディングにIRON MAIDENの2nd「KILLERS」のオープニング曲という超変化球は微妙。他のメロデスバンド同様、リリースを重ねる毎にデス要素は減っていくので、貴重な作品なのは間違いなさそうだよ。まあアチエネの場合はね、ゴシック方面ではなくアグレッシブHMに移行するわけだから、私のように70年代HRから聴いてる世代にとってはむしろありがたいけれど。この時点でマイケルにはSPIRITUAL BEGGARSが、クリストファーにはARMAGEDDONがあったので、アチエネは日本公演を最後に解散する予定だったとか。それがね日本のファンの熱烈歓迎を目の当たりにして気が変わったんだって。これは日本のヘヴィメタラーのファインプレーでしょ。やっぱ日本のHR/HMファンは良質なのね。ビッグ・イン・ジャパンから始まる伝説(始まりはCHEAP TRICKか?)確実に受け継がれているじゃあないか。
#2276 / RISE OF THE TYRANT / 2007
★★★★★

アグレッシブさが増したにもかかわらず全米84位を記録した7thアルバムです。前作に引き続きこの音楽性でトップ100入りとはね、世界的に知名度が上がっていた証拠でしょう。前作レコーディング後にバンドを離れていたクリストファー・アモットが無事復帰してよかった。プロデュースはフレデリック・ノルドストローム、マイケル・アモット、ドラマーのダニエル・アーランドソンが担当。もはやメロデスではなくなっていたアンジェラ加入後のアチエネでしたが、ここにきて原点回帰、これもメロデスではないけれど、スラッシュメタルに近いアグレッション(マイケルの嗜好かな)が逆にありがたい。個人的に3rd、4thとともに今作を気に入っているのは、苦手なブラストビートと無縁な作品だからなのね。激烈リフ、メロディ、流麗なソロ、どれを取ってもアモット兄弟のギタープレイは素晴らしい。これらを支えるシャーリー・ダンジェロとダニエルのパワーとスピードも安定感抜群。こうなるとゴソウのデス声も全く気にならず、スラッシュメタル・ファンでも聴ける作品だと思うよ。アチエネ最強の演奏陣から放たれるファストチューンはどれもこれも高品質です。個人的にはゴソウ時代の集大成としたい。日本盤のボートラとしてカバー曲”The Oath”を収録。MANOWARの”死戦士宣言”ではなく、KISSの”炎の誓い”の方だよ。