APRIL WINE
APRIL WINE(Canada/加)
#14 / FIRST GLANCE / 1978
★★★★★★★

知名度はメジャー級じゃなくてもいいものはいい。本国ではどういう扱いなのか知らないけどRUSHやTRIUMPHに次ぐ「カナダの至宝」と言ってしまおう。トリプルギター体制がウリだったりするんだけれど、そうなったのは実はこの7thアルバム「閃光」から。このバンドの特記事項として、バラード系の秀逸さを挙げないわけにはいきません。とにかく美しい。歌声もメロも曲も美しい。それはもうハードロックバンドってのを忘れてしまうほど。このアルバムだと“Rock N Roll Is a Vicious Game”がそれに当たるのかな。とにかくこの時期のアルバムには必ず1曲は名バラードがある。バンドの中心人物(ほぼワンマンバンド)Vo&Gのマイルス・グッドウィンの声が好きだな~。RIOTのガイ・スペランザと共通の鼻にかかった例のアレですな。グレン・ヒューズを頂点とする軍団の一員…超個人的カテゴリーで申し訳ないですが。どうやらお気に入りのヴォーカリストには、含有量の差こそあれだいたいこの要素があるみたい。このバンドは師匠経由で知りました。例によって何かメインのアルバムを録ってもらったテープの余りに数曲入っていたんだと思う。アルバムとしては5th「THE WHOLE WORLD’S GOIN’ CRAZY」と今作からのチョイスだったかな。つまりは当時師匠が推していたってことであり、後にこのアルバムから“Roller”(トリプルギターの掛け合いあり)と“Silver Dollar”(こちらもツインギターの上にリードギターが乗っかる)をコピーすることになりました。そういう想い出も含めてのイチオシです。“Right Down to It”も好きだったね。オープニング曲のエフェクトがかかったベースもファンキーで良い。深めのリバーブもマイルスの声を引き立てる。一生聴き続けるアルバムですね。
#82 / THE WHOLE WORLD'S GOIN' CRAZY / 1976
★★★★★★★★

日本での知名度はイマイチかもしれませんが、本国ではトップクラスのハードロックバンドです。何しろこの5thアルバム「ショットダウン(恋の衝撃)」はカナダで1位を獲得しておりますゆえ。我々世代だとRUSHやTRIUMPHとともに真っ先に思い浮かぶカナディアン・バンドですね。このアルバムには同郷のフランク・マリノ(MAHOGANI RUSH)が”So Bad”にゲスト参加してます。ちなみにこの段階ではまだトリプルギター体制になっていませんでしたが、個人的にはトリプルギターが炸裂する7th「FIRST GLANCE」とこの5thが特に想い出深い作品です。まだモンスターズ・オブ・ロックに出演する前だね。出演後にはアメリカでの知名度も確実に上がりました。快活ロックンロール系の楽曲もいい意味で単純ではないし、ミッドテンポの楽曲には独特のウネリがあるところがポイントだ。ブリティッシュなんだろけど、ここは敢えてカナディアンと言っておきましょうか。持ち味のバラード系には痺れまくりです。特にこの時期のバラードは全部好き。今作だと2曲、“Wings of Love”と“Like a Lover, Like a Song”ですな。どちらもマイルス節が炸裂する珠玉のバラードです。コピーした経緯もあって当時よく聴いてたからね、ワンフレーズでも聴けばあっという間に高校時代にタイムスリップさ。ちなみにUS盤(レコード時代の日本盤)には“Marjorie”も収録されてるんだよ。6th「FOREVER FOR NOW」のラストを締めくくるこれまたバンドを代表する名バラードだから実に美味しい。師匠に録ってもらったテープには当然”Marjorie”も含まれてました。このアルバムからはオープニング曲の“Gimme Love”をコピーしましたが、独特のノリが難しかった。その他“Rock n’ Roll Woman”や“Shotdown”も大好きです。ラスト2曲の“Kick Willy Road”とタイトルチューンはファニーな楽曲でこれまたグッド。こういうアルバムの締めくくり方もいいですな。やっぱ7thと甲乙つけ難い名盤と言わせて頂きたい。
#213 / THE NATURE OF THE BEAST / 1981
★★★★★★

メタリック且つポップな曲が増した、過渡期の9thアルバム「野獣」です。そう聴こえるのはギターの音(歪み具合)が変わったからかもしれない。UFOの「宇宙征服」を聴いた時と似た感覚ですね。TRIUMPHの「メタル同盟」と同様に、80年代らしい音づくりってことかもしれない。前作までとは明らかに方向性が異なるものの、これはこれで素晴らしい。何しろ今作はアメリカで一番売れたアルバム(本国では6th「ショットダウン」が一番売れたんだって。カナダ1位)であり知名度が一気に増したからね。ちなみに同年JUDAS PRIESTが「黄金のスペクトル」を、KING CRIMSONが「ディシプリン」をリリース、アメリカを意識したであろう問題作が発表される中、今作におけるAPRIL WINEの匙加減は絶妙でした。売れた故に、一般的に見ることができる映像もこの時期のものが多い。映像といえば、例のあの風変わりなドラムソロが思い出されます。今ではDVDを持っていますが、初見は師匠が持ってきたビデオテープでした。個人的には黄金期以降の作品と捉えていますが、師匠が気に入っていたこともあり、何度も聴くことになったのでした。このアルバムからは結構コピーしたからね。1~2回合わせた程度で終わってしまったから、うっすらとした記憶だけど…“Sign of the Gypsy Queen”、“Just Between You and Me”、“Wanna Rock”、“Future Tense”、“Crash and Burn”あたりだったと思う。曲名を略称で呼ぶのもコピーあるあるだね。「ジャスビ」はいいとして…「クラバ」とか「フューテン」とか「ワナロ」とか、無理矢理縮めて笑ってましたな。
#485 / POWER PLAY / 1982
★★★★★

81年にリリースされた前作「NATURE OF THE BEAST」で印象が変わったとはいえ、TRIUMPHは「ALLIED FORCES」を、RUSHは「MOVING PICTURES」をリリースした年であり、かつてはともにツアーした同郷バンドたちも、それぞれ変化を余儀なくされた時代でした。ちなみにそれぞれの82年作品は、TRIUMPHが「NEVER SURRENDER」、RUSHは問題作「SIGNALS」、そしてAPRIL WINEがこの10thアルバムです。変化に戸惑いつつもまだ熱心に聴いておりましたな。前作の成功を受け大規模なツアー(ソロコンサートに加えMSGやKING CRIMSON等のサポートも)を敢行後、18か月の活動休止を経てリリースされた復活アルバムでした。徐々に好みから外れてきたとは思いつつ、貸しレコード屋さん全盛期だったから問題なし。前作を引き継ぐ路線(メロは後退)で、80年代らしいリバーブ過多な音が特長でしょうか。師匠から候補曲として聴かされた“Doin’ It Right”はこのアルバムに収録されており、そうなれば聴かないわけにはいくまい。ということで実際コピーもして何度か合わせた記憶があります。歌詞はほぼ覚えているからね。シングルカットされたのは“Enough Is Enough”とBEATLESのカバー“Tell Me Why”。カバー曲は昔から取り上げているのでむしろ得意技だね。レノン=マッカートニーの魅力は薄れ(笑)良くも悪くもAPRIL WINEらしいバージョンに生まれ変わっています。”Anything You Want, You Got It”は毎度お馴染み、想像の斜め上を行くオープニングチューンでした。過去の名バラードには及ばないながら、”What If We Fall in Love”には耳を惹かれます。“If You See Kay”はそれに準じたバラードですが、マイルス・グッドウィンの作品ではなかったりする。どうしたマイルス!? 成功と引き換えに失ったものは大きく、次の作品でメンバー間に亀裂が生じます。その後も紆余曲折があり…2023年12月3日、75歳でマイルスは亡くなりました。
#639 / FOREVER FOR NOW / 1977
★★★★★

大好きな2枚「THE WHOLE WORLD’S GOIN’ CRAZY」と「FIRST GLANCE」に挟まれた6thアルバムゆえ当然外すわけにはいかないのですが、かなり実験的なアルバムに仕上がっています。色んなことをやってみたくなっちゃったのかな。カントリー&ウエスタン、カリプソ、イージーリスニングなど、APRIL WINEらしからぬ曲が収録されている点が面白いね。カナダのチャートで最高5位を記録しました。リーダートラックのタイトルチューン、安定の”Child’s Garden”、お得意のバラード”Lovin’ You”、プロムのチークタイムが想起される”You Won’t Dance with Me”(カナダのシングルチャート6位)、多様性を見せつけた7曲目から9曲目と聴きどころは多いのですが、先の2枚が傑作すぎるもんだから、物足りなさを感じてしまうのは仕方ないと思うし、ジャケが味気ないのにも目を瞑りましょう。そんなのは些細な事だと思わせてしまう名曲が入ってますから。それはアルバムのラストを飾る名曲“Marjorie”なんですね。“Wings of Love”や“Like a Lover, Like a Song”(”Just Between You and Me”は次点かな)と肩を並べるバラードの傑作です。APRIL WINE三大バラード曲の一つと断言しましょう。この1曲だけで☆5つの価値あり。歌メロ、コーラス共に文句なし。加えてマイルス・グッドウィンによるストリング・アレンジが秀逸なんですね。誤解を恐れずに言わせて頂くなら、これは最早ビートルズの領域だと思う。ちなみに初心者には、5th「THE WHOLE WORLD’S GOIN’ CRAZY」のUS盤がお勧め。前出三大バラードが全て収録されているお得盤です。
#849 / HARDER…FASTER / 1979
★★★★★
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アメリカで認知されるきっかけとなった8th。Monsters of Rockに収録されて知名度を上げた“I Like to Rock”がこのアルバムに入っているからなのさ。この曲自体はどうってことないと思うけどね。過去の作品の中にはもちろんのこと、この後の作品の中にだってもっともっといい曲がたくさんあるっつーの。Monsters of Rock恐るべしってことだな。次の「NATURE OF THE BEAST」でバンドのピークを迎える前夜祭的な位置づけだから聴いておかないとね。ラストでは…なんとクリムゾンの“21世紀の精神異常者”をカバーしてますよ。小難しいことをサラリと演っちゃってるあたりテクも間違いなしと。キメのフレーズもビシッと合ってるもんね。流石です。ジャケはダサい。
#1014 / STAND BACK / 1975
★★★★

デビュー当時(1st~3rd)のAPRIL WINEは未聴なので、知ってるアルバムの中ではこの4thがいちばん古いモノになります。コレを聴く限り…遡る必要はないのかなと。オープニングからの3曲くらいは間もなく花開く曲(“Marjorie”とか)の原型という感じで良いのですが、後が微妙なんだね。バンドの方向性を探ってる状態か?ジム・クレンチ(2nd~4thまで在籍したベーシスト兼ヴォーカリストで後にBTOに参加して90年代に出戻る)が歌っていると思われるファンキーな曲とかボレロ調の曲とか…いまいちパッとしないわけよ。1曲目もジムの作品でヴォーカルも担当してるみたいなんだけどね、マイルスの声じゃないからCDを入れ間違えたのかと思ったもの。この曲だけ聴かされたらAPRIL WINEだとは思わないよね。
#1162 / ANIMAL GRACE / 1984
★★★★

すっかり熱が冷めてしまった11thアルバム「野獣の叫び」です。オープニングの“This Could Be the Right One”がリーダートラックってことでいいかな。序盤は産業ロックと言っても差し支えない美しさ重視の楽曲が続きます。中盤から思い出したように「THE NATURE OF THE BEAST」的なサウンドになるんだけどね。歌メロも本来の持ち味がそこそこ出てます。しかし、コレでは納得しないわけですよ。マイルスが歌ってるから救われてるって感じ。時代に乗り遅れまいと売れ線を狙ったんだね。まあそんなわけで、これ以降のアルバムは未聴でございます。どうせなら同じく未聴の1st~3rdに期待したいところですが…安くないのよね~。
#1895 / LIVE IN LONDON / 2009
★★★★★

1981年ハマースミス・オデオンのライブは当時すでにVHSで映像としてリリースされていました。ちなみにベータ版もレーザーディスクもリリースされたらしいよ。時代だね~。それをダビングしたものを師匠がウチに持ってきて鑑賞したな。ドラムソロが凄ぇとか言いながら見た記憶があります。あれは確かに珍しいパフォーマンスだった。2008年に出たDVDを買ったからCDまで買う必要はなかったんだけどね、安かったからつい買っちゃいました。当然の如くアメリカで一番売れた『THE NATURE OF THE BEAST』時のライブです。当該アルバムからの曲を主軸に、ライブの定番等かつての名曲が挟まる内容。トリプルギターがライブ映えする”Roller”、モンスターズ・オブ・ロックでお馴染みの”I like to Rock”、演奏力の高さを見せつけるクリムソの”21st Century Schizoid Man”など、それぞれが盛り上がりどころとなってます。マイルスの3PUレスポールがカッコいいぜ。個人的には色んな想い出込みでこのライブが好きなんだけども、入手できるかどうかはともかく他にもライブアルバムはあるので、そちらを選んでもいいかもしれない。今作に関しては迷わずDVDをゲットすべし。
#2014 / ELECTRIC JEWELS / 1973
★★★★

メロはいまひとつながら方向性が定まってきた3rdアルバムです。プラチナを獲得する次作「STAND BACK」の前夜祭的作品かな。レコーディング・エンジニアの中にRUSH作品で名を馳せるテリー・ブラウンがいる。終盤のギター音量がバカでかくなるタイトルチューンや、お得意のバラード”Lady Run, Lady Hide”などそれなりにバラエティに富む内容です。”Cat’s Claw”の終盤の展開がIRON MAIDENのリフみたいなのも面白い。73年にメイデン・リフだからね。スティーヴ・ハリスにこの曲を知っているか訊いてみたいところ。ベース&ヴォーカルのジム・クレンチは2nd~4thで在籍してリード・ヴォーカルも担当したこの時期の良くも悪くもキーパーソン。脱退後はBACHMAN-TURNER OVERDRIVEに参加。92年再結成APRIL WINEに復帰。ギターとドラマーの兄弟が抜け、ギターにゲイリー・モフェット、同じくパーカッション(ドラマーと呼ばれたくなかったらしく次作でもクレジットはパーカッション。5thでやっとdrumsとなっている)のジェリー・マーサーが加入。メンバーの半分が変わった節目のアルバムになりました。ちなみにその後のメンバーの変遷は…5th「THE WHOLE WORLD’S GOIN’ CRAZY」でベースがスティーヴ・ラングに交代。7th「FIRST GLANCE」でブライアン・グリーンウェイが加入してトリプルギター体制が完成するのでした。